小さなバランスは大きなリスクを招く
私はワークライフバランスには賛成なのですが、ちょっと心配なことがあります。それは、ワークとライフのそれぞれの円が小さいままバランスさせて、それで「良し」としてしまうと、その先の成長や発展の可能性が低くなってしまう点です。円をより大きくすることができないのです。
たとえば、現在の日本人の平均年収は約460万円(国税庁・令和5年分民間給与実態統計調査)で、中央値はそれよりも低くなっています。
仮に年収300万円の人が、ワークライフバランスを志向したとしましょう。たとえば、趣味のゲームや釣りに没頭し続けたとします。
すると、そのバランスの取れた状態を継続しようとするので、年収がほとんど上がっていかない可能性が高いのです。
もし勤務先の企業が何らかの危機に見舞われ、退職を余儀なくされたら、その相対的に小さな円のバランスさえ壊れてしまいます。小さな円のバランスは、ちょっとした外部環境の変化でも、大きな影響を受けることがあります。
そして、小さな円のバランスが壊れたら、より小さな円でしかバランスを取れない可能性が高い。なぜなら、小さな円だと選べる選択肢が限られてしまうからです。そうなると趣味のゲームや釣りなどを楽しむ余裕もなくなってしまいます。
小さな円ですがバランスできたことに喜んで、そのバランスを大事にしていると、予想外のことが起きて、まったく想定外の未来が訪れるかもしれないのです。まさにアイカンパニーの経営危機です。
これがワークライフバランスの落とし穴です。
小さな円のワークライフバランスには、こうした落とし穴があるのですが、それがあまり知られていないことに、私は憂慮しています。