「電話」が離職の原因になり始めたのは2015年ごろから
入社後1年未満で会社をやめる社員の理由に「電話」があげられるようになったのは2015年ごろのことです。
産業カウンセラーを務めている私も、「電話が離職の原因」と聞いて、初めは信じられませんでした。
でもその話を人事担当者に話したところ、「うちでもありますよ」と言われて驚いたことを覚えています。
「電話がこわい」という傾向は年々強くなっています。最近では、電話応対をしている最中に泣き出してしまう例も出始め、電話恐怖症は若者の間で定着しつつあるのではないかと感じます。
もうひとつ、2015年ごろから顕著になってきた傾向があります。
それは、自分の意思を伝えられない人が増えてきたということです。
私が以前から新人研修で必ず聞く質問があります。
それは「もしランチセットで食後にコーヒーを頼んだのに、紅茶が来てしまったとき、あなたはどうしますか?」というものです。
2015年以前ですと、「店員さんに言って、注文通りのコーヒーに替えてもらう」という人が7〜8割でした。
しかし最近では、「替えてもらう」のは5割弱。つまり半数以上の人は「黙ってそのまま紅茶を飲む」というのです。
コーヒーが飲みたかったのに紅茶が出てきたとき、なぜ「替えてください」というひと言が言えないのでしょうか。
その理由について、「なぜ言わないのか?」と聞いてみると、以前は「面倒くさい」とか「まあいいやと思うから」という答えが多かったのですが、最近は「何と言えばいいかわからないから」「どう思われるか心配」「言うタイミングがつかめない」などの回答が多くを占めるようになりました。
つまり人とどうかかわるのか、コミュニケーションの問題が浮上してきているのです。
もし日本人が近年コミュニケーション下手になってきているとしたら、電話で話すのがこわくなるのは当たり前といえるでしょう。
電話恐怖症は日本人のコミュニケーション力の低下と密接に関係しているのです。