「輸入米にまで言及したのは行き過ぎだし、絶対やっちゃいけない」
消費者としては、例年、新米が出る前の梅雨から夏にかけてはコメの値段は安くなってきたという感覚がある。
「去年の夏から秋は現実的におコメは少なかったですが、これまで何十年もおコメは余り続けてきたからここまでおコメがない事態になるなんて想像できず、小売業者やコメを使う外食産業の多くがタカをくくっていた部分はあったと思います。普通なら6月、7月に前年度のおコメの価格は下がることはあっても上がることなんてありませんでしたから。
それが、ここまで毎月『また上がるぞ』という状況ですから、こうした過熱感があるうちに販路を確保しておこうという生産者もいて、去年の冬くらいから『少し安くてもいいから、今度の新米の契約をしてほしい』と連絡をもらうようになりました。
今コメ農家は売り手市場ですから、『この瞬間に売り込んでおかないと』という考えだと思います。僕がスーパーをやりはじめて30年以上の間で、個人の生産者から売り込みが来たのって2件だけですよ。それが去年の冬から今までで4件もそういった連絡もらっていますよ」
「令和のコメ騒動」が起きる去年まで、コメは“売れない”商品だったということだろうか。
「そもそも10数年前からコメ離れというのは始まっていて、コメの人気というのはどんどん落ちていました。日本人が朝ごはん食べる時にパンですか? ごはんですか?と聞けばだいたい『ごはん』と答えていたのが、10数年前からパンに逆転していったと思います。
そうして何十年もおコメは余り続けてきていたからこそ、お金をかけてどこどこのおコメはおいしいってCMするようになってきたんですから。ダイエットをするにはコメを抜くというのが流行ったこともありましたしね。相対的にパンの売れ行きが異常に良くなったというわけではありませんが、コメ以外の選択肢が増えたことなど様々な要因からコメ離れが進んだなという印象でした。
それが今回のコメ騒動で、“おコメがないない”ってメディアで報道され、炊き立てのおコメの動画がふわあっとさんざん流されましたよね。そういった要素が絡み合って、コメ離れしていた人が戻ってきた、そんな風に感じています。おコメの価格って2倍以上になっているわけですよ。普通なら仕入れの7割が売れればいい方だったのが、今は完売して、枯渇したところにも人が殺到している状況ということです」
小泉大臣の動きはどう見ているのか。
「古古古米の放出までは過熱するおコメ相場に効果があって良かったと思います。ですが、輸入米にまで言及したのは行き過ぎだし、絶対やっちゃいけないと思う。今の関税の状況ならまだ輸入米が3000円台ぐらいだから、極端に輸入米しか売れなくなるということはないとは思いますが、それでも日本のおコメが高騰してからは前より売れていますよね。
今は関税である程度守られているけど、小泉さんがそれを緩めるようなことをすればヤバいことになると思います。僕は生産者と消費者の間の目線で見て、国産のおコメで3000円程度になっていくのが理想だと思っています。農家もコメ作りをしやすい、消費者もコメ離れを起こさずと考えるとこのくらいですよね。
輸入米の流通が拡大したら生産者にとって新たな脅威になりますよね。『なければ輸入すればいい』というのは悪い風習でしかないし、『じゃあ何でなくなってしまったのか』に目を向けた政策をとってほしいですね。
卵も2年ほど前の鳥インフルエンザがきっかけで、2割くらい高騰しました。燃料代やエサ代の高騰など、生産しづらい環境になっていたわけです。野菜だってそうで、コメだけではありません。生産者が生産しやすい環境というものを考えていかないと、日本人が日本の食べ物を食べられなくなる時代になりかねないですよ」
親米派の“コメ担当”大臣がこの至言をどう受け止めるのか、注視が必要だ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班