ビジネスネームを導入した市役所での現状
「寝屋川市でのビジネスネームは、職員が希望する名前を申請し、承認が得られれば業務時にその名前の名札を着用できる仕組みです」(寝屋川市役所・人事室・担当者、以下同)
利用が想定されているのは主に市民対応の窓口部署で、生活保護のケースワーカーなど、一部文書に実名が必要な職務では対応していない。また、電話やメールなどの連絡手段では本名を使う方針だという。
「ビジネスネームをどこまで使っているかということですが、基本的には身に着けている“名札”がビジネスネームOKになった……という風に考えていただければわかりやすいかと思います」
ビジネスネームの選定にあたって厳格なルールはなく、たとえば「田中さん」が「鈴木さん」という名前を使うことも可能だという。ただし、あまりに非現実的な名前はNG。日本人であれば一般的な日本名であること。特別な事情がない限り、奇抜な名前は考え直してもらう場合があるという。
とはいえ、現在の利用者はまだ1人のみ。「庁内での認知や浸透はこれから。心理的な安心感を得られたという声はあるものの、実績としての効果はまだ把握できていないのが現状です」と説明する。
そして、ビジネスネームを実際に使っていく中で注意点についても話した。
「たとえば『田中』というビジネスネームの名札をつけて窓口業務をしている職員に、職場の同僚がうっかり『鈴木さん』と本名で呼んでしまったら混乱が起きてしまいます。ビジネスネームを使う際には、職場全体で名前の共有を徹底する必要があります」
名前はその人の顔であり、責任の証という意見もある。しかし、SNSなどネット上で簡単に個人情報がさらされる現代では、名前が働く人の安全を脅かすリスクにもなっている。
ビジネスネーム制度は、すべての働く人が安心して働ける環境をつくるための新たな一歩となっていくだろう。
取材・文/集英社オンライン編集部