井ノ本氏への刑事告発は行わない
いっぽう斎藤知事は議会で、立花氏らへの情報漏えいについて県が容疑者不詳のまま地方公務員法違反(守秘義務違反)の容疑で兵庫県警に告発し、XとYouTubeの運用会社に立花氏らのポストの削除を依頼したと説明。
また県が5月27日に井ノ本氏を懲戒処分したことも報告した。だが、井ノ本氏を停職3か月とした処分の結論には疑問が噴出している。
斎藤知事らによる漏えい指示の有無を判断せずに斎藤知事への責任追及を回避し、同時に井ノ本氏も“大甘”の処分にとどめたとの声だ。
5月27日の会見で県人事課長は、斎藤知事らが漏えいを指示した可能性が高いとの第三者委の判断を「否定するものではございません」と明言し、県当局自身が斎藤知事を疑っていることを隠さなかった。
だが同席した職員局長は「知事からの指示は(あったかなかったか)どちらかに断定できる客観的な判断材料も存在しません。このため指示があったとまでは認定しません。いっぽうで知事からの指示があったと職員(井ノ本氏)が信じている状況にあったと考えております」と説明。この“信じている状況”を井ノ本の情状をくむ材料にしたというのだ。
さらに、立花氏に情報を漏えいした人物は容疑者不詳のまま告発したのに、井ノ本氏の漏えいは実行者を特定したのに告発しないと説明した。
「(井ノ本氏の)行為態様、停職3月という社会的経済的制裁を加えていることに鑑み、刑事上の厳罰をさらに課すことまでは求めないこととし、刑事告発は行なわないことといたしました」(職員局長)
これに県関係者は憤りを隠さない。
「Aさんは昨年7月に『一死をもって抗議する』との遺書を残し自死したとみられています。生前Aさんは私的情報が出回っていることに苦しんでいました。井ノ本氏がこれを吹聴したのは、Aさんの人格をおとしめて告発内容に信ぴょう性はないと印象づける狙いだったとみられます。
その行為が、告発対象者である斎藤知事の指示から始まったのか井ノ本氏の独断で行なわれたのかも解明されていない。人の命を奪う結果を招いた疑いがある今回の漏えいの全容解明につながる刑事告訴をしないことは、誰にとって有利になるのでしょう」