「地方創生×大学新設」の失敗例
高校の現場を今すぐに変えられないのであれば、やはり焼け太りした一部の私大の整理が必要になる。
文部科学省は2025年4月、私立大学の学部や学科を新設する際の審査基準を厳格化する方針を示した。定員充足率が5割以下の学部が1つでもあれば新設できないという基準を7割以下に引き上げる。
そして、私大が経営から撤退を円滑に進められる専門家チームも新設する予定だ。大学の統廃合や定員削減などの適正化を進め、急な経営破綻で学生に影響が出ることを防ぐ。専門チームは撤退の要請があった大学に派遣され、資産の処分などのアドバイスを行なうという。
文部科学省は経営状態が悪化している42の学校法人に経営改善計画を提出するよう求め、経営指導も行っている。改善しない場合は助成金の減額を行なう。ようやく重い腰を上げたのだ。
大学・学部の新設は、学生集めの難易度が高いにも関わらず安易に立ち上げようとする例が後を絶たない。山形県飯豊町に2023年4月に開学した電動モビリティシステム専門職大学は、2025年度入学の学生募集を早くも停止した。大幅な定員割れを起こしたからだ。
町は校舎などの整備費3億5000万円を補助、土地も無償提供していた。
慶応大名誉教授で電動モビリティシステム専門職大学の学長でもある清水浩氏は、自らの努力不足を認める発言を行なっている。当初、定員の40名は確保できると判断したが、在学生は2年生3人、1年生1人の4人にとどまった。
この大学は、過疎化が進む飯豊町がリチウムイオン電池を軸とした産業創出を目指す「飯豊電池バレー構想」をもとに誘致したものだ。このように自治体が地方創生という言葉を盾に、大学の新設を進めるケースもある。
そうした動きにも政府は釘を刺すタイミングが訪れているのではないだろうか。
取材・文/不破聡 写真/shutterstock