卒婚で、自立した個人として生きていく

人生100年時代の働き方は、富士山型ではなく、八ヶ岳型。1つの仕事ではなく、いろいろな仕事を経験することがリスクヘッジにもなりますが、パートナーとの関係はどう考えていくべきなのでしょうか。

変化の時代に、ひとりのパートナーと添い遂げるということは、ますます難しくなっていくのかもしれません。子どもの独立や定年後も40年続く人生を考えれば、離婚や卒婚を考える人も増えるでしょうし、自分らしい人生を歩んでいくうえで、それは決して悪いことではないでしょう。

卒婚したことで、T.Nさんは、誰にも気兼ねなく、幼いころから憧れていた場所に住み、もう一度親との暮らしを楽しむことができました。

S.Kさんは、卒婚はしていませんが、信州に移住する際に妻と今後の暮らしについてじっくり話をし、これからは夫と妻という役割ではなく「個」として向き合っていこうと約束をしたといいます。

多くの絶景スポットがある信州
多くの絶景スポットがある信州
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家事に関しても移住前は妻がすべてを担っていましたが、分担していこうと決めました。その結果、料理はS.Kさんの役割に落ち着いたそう。

私は料理のセンスがいいようで、安いもの、美味しそうなものを買ってきて適当に味付けすると実にいい感じの料理になります」と少し自慢げに話してくれました。

いずれひとりになる私たち。夫婦といえども個人として自立していることはとても大事なことのように思います。

「還暦婚」で手に入れた安心感

一方で、「還暦婚」をする人にも出会います。安定した関係性の中で、これからの人生を楽しむというのも1つの選択肢でしょう。例えば、41歳のときに人材サービス会社から独立し、現在は「うるおいキャリア」をキーワードに個人のライフデザイン支援に携わるU.Mさん。

「Good Over 60’s」のメンバーでもあるU.Mさんは、子どもの頃から結婚願望は全くなかったといいますが、コロナ禍での心境の変化があり、60歳の誕生日に7年間お付き合いをしてきたパートナーと「還暦婚」をしました。

家族も面会できないような未知の事態が起こる時代、入籍して関係性を安定させておいたほうがいいかもしれないと思ったそうです。

多様化するパートナーシップの形
多様化するパートナーシップの形

食の好みが合うことも結婚の決め手になりました。実はU.Mさんの夫は料理人で、2人は夫が経営するお店で出会ったのです。

食は人生のヨロコビですから、食事をともにする頻度の高いパートナーと好みが合うことは幸福につながりそうです。リモートワークの普及で「職場結婚」は減っていますが、「食場結婚」はねらい目かもしれません。

U.Mさんは週末だけを一緒に過ごす「週末婚」を選んだので、生活はあまり変わらないものの、やはり信頼できる人が身近にいる安心感は大きいとのこと。

またU.Mさんの「一回り下の夫の夢を応援する楽しみがある」という言葉には、自立した大人ならではのゆとりが感じられました。そしてひとりひとりが人生の主人公であるならば、年齢差の問題ではなく、一番近くでその人の「ありたい姿」を応援しあえる関係こそが、これからのパートナーシップなのかもしれません。