長年続けている趣味や、特技を仕事に

もし長年、続けている趣味があるなら、それを仕事にすることを検討してみましょう。人に教えられるレベルにまで極めて、自宅で教室を開くというのは代表的な起業パターンです。

20年ほど前に「サロネーゼ」という言葉が雑誌「VERY」で生まれてから、ひそかに憧れていた人もいるかもしれませんね。

自宅を教室にすればコストも抑えられますし、子どもが独立するタイミングは自宅をリフォームして教室スペースをつくるチャンスです。自宅が難しくて、いまはレンタルスペースが各所にありますし、「料理+お花」など友人とチームを組んでオリジナリティを発揮しつつ、教室スペースも融通し合うという手もあります。

教室以外にも、趣味を活かした仕事を立ち上げた人はたくさんいます。例えば、犬が好きでしつけも得意だった人が、散歩中に近所の人から愛犬のお行儀を褒められて、犬の散歩で起業したというケースも。

趣味を活かした企業が近年増加
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自分では好きで続けていただけなので当たり前と思っていたことが、他の人から見れば特別だったということもあるのです。自分の趣味なんてたいしたことないなどと卑下せずに、周囲の人からの誉め言葉や頼まれごとも素直に聞いて、可能性を検討してみるとよいと思います。

90歳になっても「編み物外交」を続ける

例えば私の母も、周囲からの誉め言葉や頼まれごとがきっかけで、編み物が仕事になりました。

母は子どものころから編み物が好きでした。結婚後は家族にはもちろん、親戚やご近所さんなどに、お祝いやちょっとしたお礼代わりに、セーターやマフラーなどを編んでプレゼントしていました。センスもよく、やがてお金を払うから編んでほしい、編み方を教えてほしいと頼まれるようになります。

子育ての手が離れた50代になって、母はチャレンジを始めます。人に教えるからには資格があったほうがいいだろうと考えて編み物教室に通い、師範資格と講師免状を取得したのです。自宅で教室を開くようになったのは60歳を過ぎてから。当時はまだそんな言葉はありませんでしたが、いわゆるサロネーゼデビューです。

父が70歳で引退してからは夫婦で団体旅行に参加するようになったのですが、シニアモデルばりに2人で手作りニットを着ていくので、一緒に旅をしたお仲間からも注文が入るようになり、顧客は全国規模に広がっていったのでした。

編み物で定年後の人生が楽しく?
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90歳になったいまはもうお教室は閉じていますが、「編み物外交」(父が命名)は続いていて、全国各地の友人の誕生日などにプレゼントをしてはお米や果物などの返礼品が届くというビジネスモデル(?)が定着。

編み物は製図をする際に頭も使うし、手も使うし、ボケ防止に最適なのでしょう。いまだすこぶる元気で、母の才能を受け継いでニット作家として活動している三女(私の妹)から新しい編み方を習ったりもしています。

「お友達の顔を思い浮かべながら、デザインを考えるのが楽しい」と語る母は、まさに好きな仕事を長く続けている、人生100年時代のロールモデルだなあと感心しています。