テクノロジー、食、映画の道にそれぞれ進む子どもたち

トスカが7年生の12歳のとき、演劇クラブの先生が顧問を辞めた。それでトスカが演劇クラブを引き継いだ。

トスカは、昔からずっと女優だった。かなり幼いころから、演劇やダンスや芸能や音楽に夢中で、ずっと映画が大好きだった。

ヨハネスブルグでは、金曜日の夜は一緒にソファに座り、恋愛映画を観ながらアイスクリームを食べた(よそ見をしながら食べるそのときの癖がいまも残っている)。

トスカは、あらゆる芸能クラブに所属していた。だから、いまトスカが映画監督になって自分の映画を製作し、〈パッションフリックス〉という自分の会社でロマンス小説を映画化、配信しているのは納得できる。

わたしは、おしゃれに装い、娘と一緒に映画のプレミアショーのレッドカーペットを歩くのを楽しみにしている。

将来の夢はレッドカーペットを歩くこと
将来の夢はレッドカーペットを歩くこと
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親は子どものことで、たくさんのストレスを抱える。食生活カウンセリングの場でもよく見かけた。子どもを有名な学校や大学に入れるために、たくさんの書類を書かなければならず、父親や母親がストレスを抱えて食生活に影響が出ることがある。

わたしは、大学入学や就職のための書類は子どもに書かせるべきだと伝える。子どもの将来は子ども自身が責任を負うべきなのだから。

子どもが事業を始めたいと考え、賛成するなら応援すればいい。子どもに行儀作法を教えるのは必要だけれど、やりたいことは自分で決めさせるべき。

子どもたちが〈テスラ〉や〈スペースX〉、〈ザ・キッチン〉に〈ビッグ・グリーン〉、〈パッションフリックス〉を始めることは予想できなかった。

でも、イーロンがテクノロジーで成し遂げようとしていること、キンバルが食の世界で築いていること、トスカが映画でやろうとしていることはわかる。すべて、3人が子どものときに大好きだったことに根ざしている。

#2 に続く

文/メイ・マスク 写真/Shutterstock

72歳、今日が人生最高の日
メイ・マスク (著)、寺尾 まち子 (翻訳)、三瓶 稀世 (翻訳)
72歳、今日が人生最高の日
2020/7/15
2,420円(税込)
240ページ
ISBN: 978-4087861297

「爽やかな風が吹き抜けるような70年の軌跡」 齋藤薫さん(美容ジャーナリスト)
「モデルとして、ひとりの女性として、ずっと憧れてきた人からのアドバイスがつまってる」 カーリー・クロスさん(モデル)
「人生は予想できないことの連続だけど、乗り越えて楽しむことができる、と教えてくれる」
ダイアン・フォン・ファステンバーグさん(デザイナー)

31歳で夫のDVから逃れて離婚、シングルマザーとなって40年。メイ・マスクは3人の子どもを育てるために、必死で働いてきた。モデル歴50年以上。通販カタログや母親役など地味な仕事を淡々とこなしてきた。モデル事務所から干されて仕事がなかった時期に、髪を染めるのをやめて白髪のままでいたら、自然体で暮らしを楽しむ姿が、キャスティングディレクターの目にとまり大きな仕事を依頼され始めた。

南アフリカ共和国の大学で勉強した栄養学は、カナダ、アメリカと引っ越す度に現地での資格が必要で勉強をし直した。プロとして他人の食生活をカウンセリングする一方で、自身はストレスでジャンクフードを食べ続け、体重が90キロ以上になった。その後も30キロの増減を繰り返したが、40代にはいり、『お腹がすいたときに、体にいいものを適量食べる』という王道のルールを守り続けて、今の体型に落ち着いた。

長男のイーロン・マスクを含む3人の子どもたちは、子どものころに興味を持ったことを尊重し、口を出さず見守り続けた結果、3人とも自分で学び、会社を興し、夢を実現させた。
現在、72歳のメイはSNSを活用して仕事の幅を広げて続け「今がいちばん楽しい」と断言する。「人生は何度でもやり直せる。あきらめずに挑戦し続ければ、必ず幸せになれる」
(原題:A Woman Makes a Plan)

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