同世代で成し遂げた“世界のベスト4”に感じた未来の光
大会最終日、日本は気持ちを立て直して3位決定戦に臨んだ。対戦相手は、同じアジアオセアニアのオーストラリアだった。1月のAOCでは60-41と快勝していたこともあり、チームの誰もが勝利を信じて疑わなかった。自信の大きさはパフォーマンスにも表れ、前半を終えて40-26と大きくリードして試合を折り返した。
ところが、後半に入ってオーストラリアがプレスディフェンスに切り換えたとたん、思うように得点できなくなった。するとディフェンスにもほころびが生じ、失点を重ねた。そして3Q中盤、鳥海が4つ目のファウルを取られてベンチに下がると、一気に流れはオーストラリアへと傾いていった。鳥海は「なんとか頼む……」という気持ちでベンチからコートのチームメイトに声を送り続けたが、結局3Qだけで25失点を喫した日本は、51-51と同点とされてしまった。
4Q、日本は再び鳥海をコートに戻したものの、いきなり出だしでオーストラリアのエース、トム・オニールソンに4連続得点を許した。これが最後まで大きく響き、日本も粘り強く戦ったものの、66-71で逆転負け。U23カテゴリーでは、2005年以来3大会ぶりとなるメダル獲得にあと一歩及ばなかった。しかし、試合後の鳥海の言葉には、悔しさよりもチームが成長したことへの喜び、そして、リオの時のような失望感ではなく、今後への期待感があった。
「難しい試合が多かったなか、ベンチのメンバーも声が出ていたし、京谷(和幸)HCも常に鼓舞してくれて、チームで戦うありがたみを感じた大会でした。予選リーグでの4勝は自分たちに力があることを確認できましたし、4位というのもまずまずの結果だったと思います。大会前は国内外からこの世代の“日本は弱い”という言葉もありましたが、それでも自分たちのベストを尽くそうと合宿を重ねてきて、このステージまで上ってきたことは本当に素晴らしかったと思います」
個人賞では鳥海と古澤がそろってオールスター5を受賞。上位3カ国からは1人ずつの選出だったなか、AOCに続いて日本からは2人が選出されたことからも、いかにこの世代には世界に通じる逸材が揃っていたかがわかる。それは、鳥海自身も同世代に対して感じていたことだった。
「若い選手がメンバーに選ばれて試合ができたことが、これからの日本の強みになると思います」
鳥海にはそれが大きな希望となっていたのだろう。もう彼の気持ちが車いすバスケから離れることはなかった。そして2ヶ月後、鳥海の言葉が的中し、日本は歴史的快挙に向けて歩み始めることになるーー。
写真/X-1 長田洋平/アフロスポーツ ・文/斎藤寿子