「目的をもって、無理せず、繰り返す」一流アスリートが実践するトレーニングの原則が仕事にも活かせる単純な理由
アジア人として初めてハンマー投げ種目でオリンピック金メダルを獲得した室伏広治氏。広治氏の父で、現在も日本大学で指導を行う「アジアの鉄人」こと室伏重信氏はその生涯を通じて数多くのアスリートたちを指導してきた。スポーツのみならず仕事にも活かせるその哲学とは?
多くのアスリートたちとのやり取りを通じて氏が確信したトレーニングに必要な原則を、『野性のスポーツ哲学 「ネアンデルタール人」はこう考える』から一部抜粋・再構成しお届けする。
野性のスポーツ哲学 「ネアンデルタール人」はこう考える #3
反復性の原則
反復は「繰り返す」という意味である。トレーニングにおいての反復は、継続していくことの重要性を示す場合が多い。「トレーニングを継続するか、中止するか」ということになると、継続していくほうが成果はあるかもしれない。
しかし単なる継続であっては、心身における「極限までの高まり」には至らない。
肉体または精神に刺激を与える。その刺激に適応させるために反復はある。そして適応したならば、反復は終了である。
しかし適応したものを維持するには、反復を続けなければならない。またその上をめざすのであれば、さらに強い刺激に適応させるための反復を行なう。
日本大学陸上競技場での室伏重信氏 撮影/内藤サトル
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また異なる種類の刺激にも適応させるために反復する。私の場合、競技力を高めるため、何種類もの刺激や強度を増し反復させた。またそれを1日のトレーニングの中で行なうこともあった。
この「反復性の原則」は一般社会でも多く活用されている。その多くは、その人を新たな刺激に適応させるためにある。語学のリスニングやシャドーイングなども「刺激への対応」にあたるだろう。
もちろん、「今、自分に適応させようとしているものは何か?」をよく知って、行なうことが重要となる。
これらのトレーニングの原則は、スポーツのみならず、あらゆる分野に効果をもたらす。そしてこれら「意識性の原則」「漸進性の原則」「反復性の原則」は、そのときの自分の目的を達成させるためのツールなのである。
写真/shutterstock
野性のスポーツ哲学 「ネアンデルタール人」はこう考える
室伏重信
2025年3月17日発売
1,045円(税込)
新書判/208ページ
ISBN: 978-4-08-721356-0
「アスリートから芸術家まで。今、困難を乗り越えて、何かを獲得しようとしている人々にとって示唆に富む本」室伏広治氏
◆内容◆
陸上競技ハンマー投げ選手としてアジア競技大会5連覇を達成し、「アジアの鉄人」と呼ばれた著者。競技者としてだけではなく、長男でアテネ五輪金メダリストの室伏広治をはじめ多くのアスリートを指導してきた。
著者は世界の強豪に比べれば決して恵まれた体格ではなかったと言うが、太い骨格に大きな手を備えた自身の肉体の特徴に「ネアンデルタール人」の面影を感じていたという。
そんな「ネアンデルタール人」の末裔(まつえい)として、今も指導する選手を通じ、会心の一投を追究する男が明かす競技人生とスポーツ哲学。
自他の才能を引き出す、究極のコーチングとは? 室伏広治との特別対談も収録。