「経営情報の“見える化”を進める」発言の真意とは?
——保育士等の人件費を10.7%引き上げることに対し、保育士たちからは「私たちの給与に反映されない」と厳しい言葉もあがりました。これについて、どう受け止めていますか?
三原じゅん子(以下、同) 政策はなかなか伝わらないため、人件費の引き上げについて報道していただいたことはありがたく思っています。とにかく現場の保育士の給与に、加算分が確実に行き届かなければなりません。そのために、できることから順次やっているところです。
まずは迅速かつ確実に、今回の増額分を一時金等も含め賃金の支払いに充てること。そして、次年度以降については給与表や給与規定の改定に取り組んでいただくこと。これらについて、自治体を通じて事業所(保育園等の施設)へ要請しています。
さらに、事業所が処遇改善の加算を受ける際の要件として、今回の公定価格(※1)の増額分を全額“賃金改善に充てている”ことを要件としているので、その結果を報告するよう求めることとしています。
——SNSで「経営情報の“見える化”を進めるための制度をスタートする」と発言されていましたが、具体的にはどのような制度なのでしょうか?
具体的には、全国の認可保育施設等を検索できる「ここdeサーチ」を改修し、来年度から各事業所単位でのモデル給与、人件費率(※2)、職員配置状況などの項目を追加することで、経営情報の透明性を高める方針です。
これにより、人件費率が不十分な施設の状況を可視化することが可能になりますし、何より保護者はお子さんの預け先を、求職者は勤務する施設を検討する際の参考にできます。
さらに、保護者や求職者が「人件費をきちんと支払っている施設がよい」と考えることで、保育業界全体において人件費率の見直しが進む契機にもなるはずです。
——人件費率などの情報は「ここdeサーチ」に公開するとのことですが、モデル給与とは具体的にどのようなものでしょうか? また、拘束時間等も明記するのでしょうか?
モデル給与とは、基本給、賞与、手当等を含めた具体的な給与の例であり、たとえば、「勤続3年目で◯円」「この役職だと◯円」といった形で示されるものです。拘束時間というか、勤務時間については、平均時間外労働時間を任意での入力項目として追加予定です。
(※1)公定価格…子ども一人あたりの教育、保育に必要となる費用のこと。
(※2)人件費率…保育士の人件費の割合は公定価格の80%が適切といわれているが、実際には社会福祉法人で70.5%、株式会社では51.9%にとどまっている。(東京都「保育士のキャリアアップ補助金の賃金改善実績報告書に係る集計結果」2017年度実績)