復活の鍵を握るのは「アウトローの真っすぐ」!?
昨季、田中将大は前年受けた右ヒジ手術の影響もあり、シーズン通してほぼファームで過ごした。これは、2007年のプロ入り後、自身初のことだ。
楽天に復帰した2021年からの3年間も、決して「期待通り」の結果ではなかったとはいえ、先発ローテをしっかりと守り抜いていただけに、やはり年齢的なコンディション調整のむずかしさ、右ヒジ手術の影響は大きかったと言える。
近年の田中将大の成績、投球データを振り返ったとき、もっとも気になる部分がある。それが、「球速」だ。MLB最終年となった2020年、田中将大のフォーシームの平均球速は92.3マイル(約148.5キロ)だった。
しかし、昨季9月28日のシーズン唯一の一軍登板では、ストレートの平均球速が140キロ代前半まで落ち込んでいた。昨季は登板がこの1試合だけだったため、一概に「球速が落ちた」とは言えないが、2023年を見てもストレートの平均球速は140キロ台中盤を記録しており、年々球速が下がっているのは間違いない。
もちろん、田中将大にはストレートだけでなく、キレのいいスライダー、スプリットという武器がある。ただそれも、「ストレート」という生命線があってこそだ。2013年に楽天が日本一を達成し、シーズン24勝0敗という異次元の記録を残した際にバッテリーを組んだ嶋基宏(現ヤクルトコーチ)が、田中将大についてこんな話をしてくれたことがある。
「アウトローに強い真っすぐを『いつでも投げられる』という自信が、本人にも僕にもありました。困ったらそこに投げれば、大怪我はしない。投手の基本でもありますが、それを高いレベルで体現できるのは、本当にすごいと思います」
あれから12年がたった今、当時のクオリティを再現しろ、というのはむずかしい話かもしれない。ただ、投手の高速化が著しい現代野球で、「140キロ代前半」のストレートを軸にするのは非常に困難と言える。