来場者も経済波及効果の主な源泉

─関西経済が、万博がらみの公共投資や来場者の消費を最大限取り込むには何が必要ですか。

来場者数を増やすことや、近隣の地域への延泊を促す仕掛けづくりはもちろん大切ですが、それ以外に、建設や観光客の受け入れに関して必要となる原材料やスタッフを、地元で調達する割合「域内調達率」を高めることも重要です。

─関西の産業界からは、万博にからむ利益の取りこぼしを懸念する声が出ています。

私は今回の万博が、関西の人々にとって、地元の魅力を再評価できる機会になればいいと思っています。それは、特産品や観光地としての地元の魅力を再評価する動きにもつながります。

一方で、関西の各自治体など行政機関は、万博で関西を訪れる観光客が日本ファン、関西ファンになり、将来のリピーターに育つよう力を注ぐ必要があります。現状の取り組みではまだまだ不足です。

万博開催で大阪の街の経済はは潤うのだろうか…
万博開催で大阪の街の経済はは潤うのだろうか…
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経産省がはじく大阪・関西万博の経済波及効果は、万博協会の来場者予想(国内客2470万人と海外のインバウンド客350万人)をよりどころにする。万博協会は、国内客の6割強に当たる1560万人が、関西広域エリアから訪れると見込む。

しかし、近畿の2府4県に鳥取、徳島両県を加えた同エリアの総人口は2160万人で、おおむね4人に3人が訪れないと目標には達しない。協会は、一定数のリピーターに加え、小中高など学校行事で訪れる子どももいるとして、目標の達成は可能だという立場をとる。

ただ、こうした子どもの入場料が公費でまかなわれていることには留意が必要だ。

写真/shutterstock

『ルポ 大阪 関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新聞出版)
朝日新聞取材班
『ルポ 大阪 関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新聞出版)
2025年2月13日
924円(税込)
272ページ
ISBN: 978-4022953001

大阪・関西万博が2025年4月、ついに開幕する。各国パビリオンでの展示のほか、有名歌手のコンサート、大相撲、花火大会などさまざまな催しがあり、お祭りムードが醸成されるだろう。
しかし、本当にそれでいいのだろうか。会場予定地での爆発騒ぎや、建設費の2度の上ぶれ、パビリオン建設の遅れなど、問題が噴出し続けた。
巨額の公費をつぎ込んだからには、成果は厳しく問われるべきだ。朝日新聞取材班が万博の深層に迫った渾身のルポ。

◆目次◆
第1章 維新混迷
第2章 膨らみ続けた経費
第3章 海外パビリオン騒動
第4章 夢洲が招いた危機
第5章 万博への直言

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