局の4階から飛び降りた翌日、自宅に届いたのは“自爆”したゆうパック
――保険事業の渉外社員だけでなく、郵便配達員にも自死した方がいたと聞きました。
2019年の内部告発では、西日本の郵便局内で局員の自死が発覚。「救急車のサイレンが今も耳から離れない」と語る同僚局員は、「彼を追い詰めたのは陰湿なパワハラと時短圧力」だと怒りをあらわにしていました。
特に深刻だと感じたのが、効率化のため配達時間を厳しく締め付ける“時短ハラスメント”でした。
2010年にさいたま新都心郵便局で職場の4階から飛び降りて亡くなった配達員がいました。ご遺族が労災認定のための活動を続け、2020年になって「時間外労働増加と年賀はがきの販売ノルマによってうつ病を患った」として労災が認められました。
その方が働いていたのは、配達ミスなどを発生させた配達員を“お立ち台”に立たせて数百人の局員を前に謝罪させるという高圧的な指導を行っていた局で、さらに7000〜8000枚の年賀はがきなどの販売ノルマもありました。
亡くなった配達員は配達に精いっぱいで、大量の年賀はがきを自腹購入していました。3度の病気休暇を取得しても復帰すればまた同じような労働環境に置かれ、妻に「◯◯ちゃん ごめんね 行って来ます」というメールを遺して自死を選んでしまった翌日、販売ノルマをこなすために自腹購入したゆうパックの商品が自宅に届いたそうです。
命に換えてまで必要な仕事なんかないはずです。なぜそこまで追い詰めてしまうのか、それが変わらないのはなぜなのか、おかしな企業風土に衝撃を受けました。
――厳しい労働環境の理由は、無理な収益構造が変わらないからということでしたが、どうして組織改革できないのでしょうか?
郵政グループには、全国にサービスを行き渡らせる「ユニバーサルサービス」が法律によって義務づけられており、赤字の郵便局は撤退すればいいという単純な理屈が通らない状況です。しかし、合理化や統廃合が禁じられているわけではありません。それなのに、その議論すらされていません。
取材する中で「全国郵便局長会」という存在が深く関わっていることがわかってきました。全国の小規模郵便局の局長が所属するこの任意団体は、公職選挙法に触れているのではないかと思われる選挙活動などを通して、与党との関係を深めて政治にも影響力を持ち、地域を守ることを建前に、郵便局数を減らすことに強く反対しているのです。