中国の低速EVとは

安さこそが中国EV普及の原動力である。

この安さには2つの方向性がある。一つは「発売された後、その車種がどんどん安くなっていく」というもの。ちょっと面白い話だが、中国の自動車販売台数はだいたい毎年、1月が一番少なく12月にかけて増えていく。年間販売目標を達成するために自動車メーカーは年後半になるほど値引きしていくためだ。

そしてもう一つの方向性が「コスパの改善」だ。電気自動車(=タイヤが4つの電気で動く乗り物)にこだわらず、電動モビリティ(電気で動く乗り物)という視点から見るとわかりやすい。

中国で最初に発展した電動モビリティは電動自転車だった。これがより高速で移動できる電動バイクへとなり、そしてタイヤを一つ増やすことによってより安定性を増して荷物をつめるようになった電動三輪へとつながる。

中国でのEV爆売れを後押しする低速EV市場の成熟「安かろう悪かろう」ではなく、消費者が求める「ちょうど良い車を低価格で」_1
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いまや中国の電動自転車は3000万台、電動バイクと電動三輪は1000万台という巨大市場を構成するにいたった。

フードデリバリーや宅配便、荷物の運送などの都市内物流において、電動二輪、電動三輪はもはや欠かせないインフラだ。中国は二輪三輪ではすでに電動モビリティへの転換を達成している。

これにタイヤをもう一つ増やした電動四輪……というのも、EV以前に誕生している。それが低速EVだ。