なぜ? 突然受け入れられたEV
ところが2021年からこの状況が一気に変わる。それまで100万台強で停滞していたEV・PHEV販売台数が爆発的に伸び始めたのだ。2021年は352万台、2022年は689万台、2023年は950万台、そして2024年に1158万台と飛躍的に伸びている。全自動車販売台数に占めるEV・PHEVは45%に達している。
いったい、何が起きたのだろうか。このEV急成長のタイミングはちょうどコロナ禍真っ只中で、私も中国を現地調査することができなかったが、2023年の中国訪問でこの疑問は氷解することになる。
「ガソリン車?買うのはバカでしょ。だってEVのほうが安いもの。燃費(電費)はざっとガソリン車の5分の1ぐらい」
北京市のライドシェア・ドライバーになぜEVを買ったのかと聞くと、こんな答えが返ってきた。
寒い北京の冬では航続距離が落ちるのでは、充電している間は仕事ができないのでは? 自宅充電は安いが外部の充電ステーションは高いのでは?と、EVがほとんど普及していない国・日本で得た耳学問の疑問をぶつけると、
「カタログスペックで500キロ、冬は半分ぐらいになるけどそれでも十分だろう。30分の高速充電でかなり走れるから休憩にはちょうど良い。充電ステーションの正規料金は確かに高いが、地方政府や自動車メーカーの補助があるからガソリンよりは明らかに安い」ときっぱり。
それでもEVは車両価格が高いのではと食い下がると、それも違うらしい。
「グローバルEVアウトルック」(※世界における電動モビリティの最近の動向を特定・評価する国際エネルギー機関 (IEA)の年次刊行物)によると、中国のEV価格は2018年時点では内燃車よりも16%高かったが、その後コストダウンが進み、2022年時点で同クラスの内燃車よりも14%安くなっている。
クラス別に見ると、中型車で29%、SUVで10%内燃車より高いが、価格差はかなり縮まっている。何より驚異的なのは小型車だ。2018年時点では71%割高だったのに対し、2022年時点では37%の割安になっている。
価格低下が続く中、2024年には「油電同価」(ヨウディエントンジャー、内燃車とEVが同価格)、さらには「電比油低」(ディエンビーヨウディエン、内燃車よりEVのほうが安い)が広告コピーに使われるようになっている。