「2人にけがをさせたことは認めるが、殺意はなかった」

木村被告は罪状認否で「殺意はありませんでした」と殺人未遂罪を否認、公選法違反についても「選挙をやっているとは知らなかった」と争う姿勢を見せた。

黒色火薬を製造・所持していた火薬類取締法違反と包丁1本を所持していた銃刀法違反については罪を認めたが、爆発物の製造・所持・使用したとして問われた爆発物取締罰則違反については「人をけがさせる目的はなかった」と起訴事実を否認した。

起訴状によると木村被告は2022年11月以降、兵庫県川西市の自宅などで黒色火薬を詰めた爆発物2個を製造。

2023年4月15日に和歌山市の雑賀崎漁港で行われた衆院和歌山1区補欠選挙の応援演説に来ていた岸田氏のそばに爆発物を投げ込み、聴衆と警察官の計2人に全治1~2週間のけがを負わせた。

警察官に取り押さえられた瞬間(撮影/共同通信社)
警察官に取り押さえられた瞬間(撮影/共同通信社)
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初公判で弁護側は「2人にけがをさせたことは認めるが、殺意はなかった」と木村被告の罪が傷害罪にとどまると主張した。

威力業務妨害の現行犯で逮捕されて以降、一貫して黙秘を続けてきた木村被告。小学校時代は活発で「将来はパティシエか発明家になりたい」「車屋の社長になる」などと夢見る人気者だったが、中学では孤立して図書室にこもりがちな「空気」のような存在に転じ、大人になってからは定職にも就かず、母親とガーデニングに勤しむ物静かな青年だった。

犯行当時、川西市の自宅の近隣住民もこう証言していた。

「木村さんご一家はもともと近所の県営住宅に住んでいて、15年ほど前にこちらに引っ越して来られました。当時はご両親と隆二さんと年子のお兄さん、それとお姉さんの5人家族だったんですけど、7年くらい前からお父さんを見なくなりました。お父さんは宅配の仕事をしていたのですが、大声で怒鳴る声がよく聞こえてきて、怒りっぽくて怖い印象でした」(近隣住民)

中学時代の木村被告(知人提供)
中学時代の木村被告(知人提供)

父親が突然いなくなったことについては、別の住民もこう証言していた。

「木村さん宅のガレージには乗用車が2台あって、夕方にお父さんが出かけて1台になり、朝方帰ってきて2台になっているというパターンでした。ところが5、6年前からずっと1台だけになり、そのころからお父さんを見かけなくなりました。

同時期に、お母さんもラフな格好ながら、きちんと化粧をして外出するようになったので働き始めたのだと思います。隆二君はほんとに大人しくて、優しそうな感じの子です。いつもお母さんと一緒でニコニコ笑っていて、車で買い物にもよく出かけています。

(事件の)2〜3週間前にも2人でガーデニングしているところを見ましたよ。逆にお父さんといるところはほとんど見たことがなくて、隆二君が高校生の時にガレージでお父さんに『グズグズするな』と怒鳴りつけられていたことがあったくらいですね」