信頼を回復させた“上手”な謝罪会見は…?
「どこで判断を誤ったのかという本質的な原因を自分の言葉で述べた上で、責任の取り方を明示し、再発防止策を伝えること」が謝罪会見での信頼を回復させる必須条件であると話す石川さん。
では、それら全てをクリアし、見事信頼を回復した“上手”な謝罪会見はあったか、と聞いてみると、
「企業では、リクルートが就活生の内定辞退率を予測し、有償で企業に提供していた問題、個人ではアメフトタックル問題での日大の選手側の謝罪会見です」
それぞれ“素晴らしい”と思ったポイントを聞いてみると、
「リクナビは、どこからどんな質問が飛んでも『学生に申し訳ないことをした』という被害者目線に立って答えていましたし、体制を立て直すための再発防止策も明示していた点がよかったです。前出の“ダメ”会見と違って、上手な謝罪会見って世の中的に目立たないんです」
一方、アメフトタックル問題の日大選手の謝罪会見でよかった点を聞いてみたところ、
「まず『関学大の選手に直接謝罪したいが、それができないと言われたから会見を開いた』という会見のキーメッセージが明らかでした。
さらに会見では、経過が細かく書かれたペーパーも用意されていましたし、『顔を出さない謝罪はない』と20歳の青年が真摯に自分の気持ちを紡ぐ姿には胸打たれるものがありました。記者からの誘導尋問にも責任逃れせず、『タックルした私が悪い』と自らの非を認める姿勢も含め、歴史に残る良い会見でした」
会見を開くまでSNSで叩かれていた日大選手だが、この会見により、世論の風向きが一変したことで、結果的に自らの人生を守る形となった。
コンプライアンス違反などの不祥事が発覚した際、企業や個人にとって顧客や取引先から一定の信頼を失うことは免れない。しかし、大事なことは事実と向き合い、そこから何を学んで、どう立て直していくかの姿勢が問われているのではないだろうか。
取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部