“ダメ”会見の共通点とは 

3つ目は、宝塚歌劇団に所属する25歳の劇団員が上級生からのパワハラなどを苦に自殺した問題における会見だ。

2023年9月に劇団員の女性が自宅マンションで自殺し、遺族側の弁護士が「過重労働と上級生からのパワハラがあった」と主張したものの、同年11月に行われた宝塚歌劇団の会見では、「ハラスメントの事実はなかった」という旨の調査報告書が公表された。

「遺族側の弁護士が証拠資料を提出したにも関わらず、それを一切反映させない調査報告書を作成し『パワハラは分かりません』という内容で公表しました。前例のない過去最悪の報告書でした。

さらに『パワハラの証拠を見せてください』と会見で言い放った姿などを踏まえても被害者に寄り添わないばかりか、さらに被害者遺族を傷つけています。第三者委員会も設置するといいながら結果的にしませんでした。

それをもって遺族弁護士らが何度も記者会見を開いていましたが、結局、宝塚側が遺族と会ったのは最後の最後だけ。和解ではなく合意書を締結して決着をつけました」

3つの“ダメ”謝罪会見から見える“失敗”の共通点とはなんなのか。

「『クライシスコミュニケーション』で一番重要なポイントは、被害者の目線に立つことです。被害者の目線に立って、しっかり事実に向き合う姿勢です。

ここが一番失敗しがちなんですが、問題が発覚した際、企業の利益を優先し隠ぺいしてしまう。そのため初動が遅れ、調査もせず、会見もクローズドにするような逃げの姿勢が見え、結果的に被害が拡大する。これが“ダメ”会見の共通点です。

会見は、被害者目線に立ちながら、事実と向き合い、何が原因で、どこで経営判断を失敗したのか、そして今後どのように再発防止をしていくのかを伝える場なんです。それがフジテレビも“ダメ”会見として選んだ3つの企業もできていませんでした」

10時間超にも及んだフジテレビの出直し会見(撮影/村上庄吾)
10時間超にも及んだフジテレビの出直し会見(撮影/村上庄吾)