誰がタワマンを買っているのか?

では、マンション投資をしているのは、どのような人なのか。

「一つは、よく話題になりますが、外国の方です。湾岸沿いの一部のマンションでは半数ぐらいが外国の方の物件もあると聞いています。管理組合の総会資料が、日本語・英語・中国語で併記される、という話も聞きました。

さらに驚いたのが、この流れが都心部にまで来ている。以前、中国人の投資ツアーで講演をしたことがあるのですが、そのときあるツアー客に聞いた話では、都心の超有名マンション購入客の1割が中国の方だということでした。都心のマンションでもそうなのかと驚きました」

タワマンが多く立ち並ぶ白金高輪
タワマンが多く立ち並ぶ白金高輪
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このように外国人が目立つ一方、国内で投資を行う人も多い。

「現在、マンション投資の裾野がどんどん広がっています。金融が非常に緩んだ結果、一般的なサラリーマンでもローンが組みやすくなり、銀行からお金を引き出しやすくなっています。

動画サイトを見れば「銀行からお金を引き出すノウハウ」を教えるものも多い。医者や弁護士、会社役員などの富裕層に加えて、副収入を得ようという普通のサラリーマンの方の姿も目立ちます。 

それと、地方にいる富裕層も積極的です。戦後80年が経って、地方の中でも資産格差が出てきて、富を蓄えた地方富裕層はすごくたくさんいるんです。その人たちは優良な資産を東京や大阪、神戸といった大都市に持っておきたい。

これまでは一軒家が多かったのですが、マンションは管理を全て、管理組合がやってくれるうえにマーケット相場が形成されているので、投資対象として優れています。こうした人の中には、賃貸で貸し出さなくても、とりあえず持っておいて東京に行ったときに使う、という人も多いですね」

また、節税目的でのタワマン購入も増えている。「相続税」におけるタワマンの評価額は、市場価値よりも低くなる傾向にある。というのも、不動産の評価は、土地は路線価、建物は固定資産税評価をもとにしていて、時価よりも安く評価されるからだ。

例えば、市場価格1億円のマンションを買っても、その相続税評価額は6000万円ほど。現金で相続すると1億円に対して税金がかかるのに対し、現金をタワマンに変えれば、6000万円の評価に対する相続税しかかからない。さらに購入する際に借入金をしていれば、借入金額部分も評価額から差し引かれるという魔法のシステムになっている。

このようなシステムがある限り、タワマン投資熱は冷めやらない。神戸市が「空室」の解消に焦る理由も、ここにある。

しかし、牧野氏によれば、どうやら「タワマンバブル」のターニングポイントが近いようだ。後編では、そんな「タワマンバブルの崩壊」と「そこで最も損をする人々」について聞く。

#2に続く

取材・文/谷頭和希 写真/Shutterstock

〈プロフィール〉
牧野知弘(まきの・ともひろ)

オラガ総研株式会社 代表取締役/不動産事業プロデューサー
1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て、三井不動産に入社。2009年オフィス・牧野、2015年オラガ総研を設立、代表取締役に就任。著書に「空き家問題」「なぜマンションは高騰しているのか」(ともに祥伝社新書)、「家が買えない」(ハヤカワ新書)等。文春オンラインでの連載のほか、テレビ、新聞等メディア出演多数。