自分をきっかけに農業を知ってもらいたい
日本や世界のあちこちで農業を学んでいた間、俳優業が頭によぎることは皆無だったと笑う。しかしながら石田は、映画『あしやのきゅうしょく』('22年)で俳優復帰を果たしている。
「食を扱った作品だったことも背中を押してくれましたが、何より、自分に声をかけてもらえることがうれしかったです」
カメラの前に立つのは約3年ぶりだったが、ブランクは感じなかったという。
「10代前半から俳優という仕事をやってきたので、身体が覚えていました」
俳優としては、今年の1月から始まったドラマ『晩餐ブルース』(テレビ東京系)にも出演している。農業はもうしないなのかと尋ねると。
「今までは知り合いの畑でやっていたんですが、今年から自分の畑を本格始動させる予定です。もちろん土づくりから。地方と東京、二拠点生活になっていくんじゃないかな」
と、目を輝かせながら期待に胸を膨らませている。
俳優業と農業。その割合は特に意識していないという。
「手探りでやっていく中で、バランスはきっと見えてくるんじゃないかな」
どちらかひとつを選び、極める。そんな選択はなかったのだろうか? ずっと饒舌だった石田はしばらく熟考し、こう答えてくれた。
「俳優の仕事で呼んでいただけるのはやっぱりありがたいし、すごくうれしいこと。そして、そこには楽しさがものすごくあるんですよね。
そして、俳優業をやっていれば日本の食や農業についての声を僕が届けられるかもしれない。
自分が俳優をやっていることで、少しでも農業に目を向けてもらえたら、俳優と農業を一緒にする意味があると思うんですよね」
取材・文/池谷百合子