「世界の警察」は存在しない

世界からなぜ戦争がなくならないのか。この疑問にはさまざまな答えがあるでしょう。例えば、国と国との間に利害の対立があるから、宗教や文化の違いで争いが起こるから、歴史的な憎しみが続いているから、あるいは人は本質的に愚かだから、といった哲学的な理由まで考えられます。

しかし、ここでは少し視点を変えて考えてみましょう。なぜ、戦争が起きたときに誰も強制的に止めることができないのでしょうか? ここで鍵となるのは、国内社会と国際社会における、暴力への対応の違いです。

まず、日本国内での場合を考えてみましょう。日本国内で誰かが暴力を振るったら、すぐに警察がやってきて、その人を捕まえます。日本には「暴力を振るってはいけない」という法律が存在し、問題を話し合いで解決するよう人々は強制されます。

そして、もしこの法律を破る人がいれば、警察が力ずくで制止します。つまり、国内社会では警察が「暴力を管理する権限」を持っており、これのために警察以外の人による暴力を防ぐことができるのです。

第二次大戦後、アインシュタインも提案していた「世界から戦争をなくすただひとつの解決策」とは?_1
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では、これが国際社会ではどうでしょうか。もしある国が別の国から突然攻撃を仕掛けられたとしても、110番通報をして、警察が止めに来てくれることはありません。なぜなら、そもそも「世界の警察」なるものは存在しないからです。

例えば、2014年にロシアがウクライナのクリミア半島に侵攻したとき、ウクライナはなす術もなくクリミア半島を奪われてしまいました。欧米諸国はロシアを強く非難しましたが、ウクライナまで駆けつけて助けることはありませんでした。