漫画と日本文化の将来
今の時代、娯楽の中で漫画が占める位置は以前ほどではないかもしれません。それでも、漫画はアニメやゲームなどエンターテインメントのベースになっていますし、ファッションの潮流にも影響を与えるなど、漫画はさまざまなカルチャーの源と言えます。おそらく漫画というジャンルそのものが衰退することはないでしょう。
だからこそ、もっと漫画界が盛り上がってほしいと思います。
「漫画ってなんだろう」と改めて考えてみると、その本質は日本美術の文脈に則った文化だということに行き着きます。
有名なところでは「鳥獣戯画」などが思い浮かびますが、漫画は古代以来の日本の絵画から生まれ、日本の文化が育ててきたもので、そこには、絵師のような日本独特の絵を描く職人システムも含まれますし、絵の技法や表現もやはり日本ならではのものがあります。
アメリカやフランスにも漫画はありますが、それらと日本の漫画の決定的な違いは、西洋絵画とは異なる日本独特の絵画技法、たとえば葛飾北斎の浮世絵が平面にものすごいスケール感を感じさせるように、平べったいのに何か動いているような感じを線で表現したり、そういう線で自然物や目に見えないものまで描いてしまったりするというところだと思います。
手塚治虫先生が偉大なのは、あの膨大な作品群を生み出したことに加え、そうした日本的な漫画の表現にさらに「感情」を入れていったことです。海外の漫画はストーリーだけを追っていく仕立てですが、手塚先生以降の日本の漫画は、ストーリーが展開していく中に登場人物たちの心情や人間の美しさをぐっと入れていき、独特の情感を感じさせます。
そういう漫画の伝統はイタリアの芸術やハリウッドの映画にも匹敵する、日本ならではの世界に誇る文化と位置づけるべきものでしょう。にもかかわらず、日本で漫画は「クールジャパン」のコンテンツ的なサブカルとして低く見られがちなのは、もどかしい限りです。
漫画の価値が正当に評価されない状況が続けば、今後、漫画文化の拠点は外国に移っていくかもしれません。
デジタル化が進んだおかげで、世界中で漫画が読まれるようになり、より多くの人に漫画が愛されるようになったこと自体はとても喜ばしいと思っています。『漫画術』が世界各国で翻訳されているのも、「漫画を描きたい」という海外の人が増えているからだと思いますし、日本の漫画に影響を受けて、世界で漫画文化が発展していくと考えるとワクワクします。
そうした海外での漫画の隆盛を見るにつけ、日本も漫画をもっと大切にしてほしいな、と思います。漫画は日本文化の文脈から生まれたものなのですから、これからも世界の漫画文化を牽引していくためにも、その最大の発信地は日本であり続けてほしいです。
漫画・イラスト/書籍『荒木飛呂彦の新・漫画術 悪役の作り方』より
写真/shutterstock













