オードリーが歌う『ムーン・リバー』はカットされかけた
名曲『ムーン・リバー』(ジョニー・マーサー作詞/ヘンリー・マンシーニ作曲)を、一度も耳にしたことのない人はいないだろう。
映画会社の重役は試写を観て、あろうことか窓辺の歌唱シーンをカットしようと提案。オードリーは「そんなの許さないわ!」と強く抵抗したという。
物語は、NYの同じアパートに住むホリー(オードリー・ヘプバーン)と売れない作家ポール(ジョージ・ペパード)との出逢いを軸に、「ティファニーのような落ち着いた静けさに包まれていると、悪いことなど起こるはずがない」と信じ、人生を自由気ままに楽しもうとするホリーを取り巻く都会の人々、次第に彼女を愛していることに気づくポールの姿を描く。
ラストシーン。ネコを探すために雨の中でびしょ濡れになった二人の抱擁が、どこまでも余韻を残す。
ティファニーは言うまでもなく、NYで設立された世界規模の宝飾品店。1837年9月の初日の売り上げは4ドル98セントという伝説を持つ。
1987年に150周年を迎えた際、女優はこんな手紙を店に贈った。
ティファニーへ
美は永遠の喜び。ティファニーの輝きは衰えることがない。
150年にわたり、あなたの名前は、“美・気品・恒久”の代名詞。
あなたの宝石のおかげで私たちの人生は輝き、
銀製品のおかげで食卓は光に包まれた。
そして私を朝食にも招いてくれたわ。
クロワッサンを食べたことは、私の大切な想い出。
お誕生日おめでとう。
でも150歳を迎えたのに、シワ一つないのには嫉妬しちゃう。
品位は年を取らない。
忠実な友より
文/中野充浩 サムネイル/Shutterstock
参考/『ティファニーで朝食を』パンフレット、DVD特典映像