レズビアンもアナルセックスも彼女はすでに知っている

「たとえばそこでね、互いの嫉妬ってどうなってるんだろう?」

「そうですね。最初は私は大丈夫だと思ってたんですけど、意外とあっちが勤めて、お給料いっぱいもらったって喜んでると、ああ~辛い、ウ~、みたいな」

「嫉妬で?」

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「そう。嫉妬みたいのがあって、私いっつも怒ってるんですよ、あっちを。こういうとこが辛いんだよって。それであっちが泣いて、ゴメンって仲直りして……。1回、こっちが辛いとか言ってから仲直りすると、しばらく大丈夫になるんで、私が。だからもういまは私が『いくら稼いだの?』で、シホさんから『×万円』って返ってくると、『あ、すごいじゃん』みたいな感じですね」

「なんかそういう関係性を見ると、やっぱりカオルさんが元からタチだったってことなんだね」

「そうですね」

「ところで、これからどうなっていくんだろう。男女ともにいけるバイセクシャルでいくのか、それともレズビアンだけかってことについては?」

「私ですか?そうですねえ。気持ち的には、男の人に対して恋愛感情を抱くのはできないかな~って思って。まあ別にセックスが……男の人とプレイするのは嫌じゃないんですけど、やっぱ感情的には女の子のほうが好きだなって……」

カオルの声はやや低めで、例えるなら女優の山口智子が静かに喋っているような雰囲気がある。その声色で言う。

「ていうか、男の人とはセックスも大丈夫なんですけど、やっぱ一緒に暮らしたりして、家族になるのって、難しいかな~って」

彼女の言葉を聞きながら、私のなかに突拍子もない想像が浮かぶ。「あのさあ、シホさんにペニスバンドを付けてもらって、処女を奪ってもらうのってどうかなあ?」

「ああ、そうですね。時々してもらってて、今日こそは濡れてるし、いけるでしょうって、やってみるんですけど、やっぱり私が途中で痛くて、『ゴメン、やっぱ無理~』って、ハハハハ……」

「なんだ、試そうとはしてたわけだ」

「ですね。いつもやめちゃって、フフフッ、結局はできないんですよ……」

笑い声のままカオルは現状を説明する。

「ちっちゃめのバイブなら入るんですけど、ふつうの大きさのディルドだと、もう入んないんですよ」

念のために説明しておくと、ペニスバンドは男性器を象ったディルドをベルトにつけて下腹部に装着する器具。また、ともに男性器型の大人のオモチャでも、バイブは振動するがディルドは振動しない。

男性器の実物は経験していなくても、それを模した大人のオモチャを、〝処女〟のカオルは豊富に経験している。それだけではない。レズビアンもアナルセックスも彼女はすでに知っている。なんというか、〝処女〟という単語に反応してしまった自分がとても愚かに見える。