今も忘れない瀬古利彦への感謝

実際、即戦力ルーキーの武井君と櫛部君は、1年目のトラックシーズンから関東学生陸上競技対校選手権大会(関東インカレ)や東京六大学対校陸上競技大会などでエンジのユニフォームを着て活躍していた。

その傍らで、同じスポーツ推薦の立場ながら、私は補助員や応援要員でしかなかった。走れない期間、2人との差はどんどん大きくなっていった。

元気のない私を見かねて、瀬古さんは頻繁に声をかけてくれた。

瀬古さんはポイント練習のある日しか所沢には来なかったが、ケガで走れない私にも必ず声をかけてくれた。

「花田、足の調子はどうだ? 落ち込んでいてもしかたないから飯でも食いにいこう」そう言って、練習後に都内で待ち合わせて食事をご馳走してくれた。

また、瀬古さんから紹介された治療院の帰りには、瀬古さんが監督をしていたエスビー食品陸上部のクラブハウスに呼ばれ、夕食をご馳走してくれたこともあった。

ケガが良くなって、ようやく試合に出られるようになったのは7月だった。

その期間、腐らずにリハビリを続けられたのは、そうした瀬古さんのサポートがあったからだと今も感謝している。

『学んで伝える ランナーとして指導者として僕が大切にしているメソッド』(徳間書店)
花田勝彦
『学んで伝える ランナーとして指導者として僕が大切にしているメソッド』(徳間書店)
2024年11月13日
1,980円(税込)
276ページ
ISBN: 978-4198659226

早稲田駅伝復活のタスキは、この男に託された!

こんなにも憎たらしくて
こんなにも放っておけない
愛弟子はほかにいない。

瀬古利彦


陸上競技専門の顧問がおらず、自分自身で創意工夫をしながら走っていた中学・高校時代。
そこから運命の師・瀬古利彦と出会い、挫折、期待、衝突、共闘を繰り返しながら掴んだ、箱根駅伝と2度のオリンピックの舞台。
現在は、母校・早稲田大学の駅伝チームを指揮する著者の、人生の歩み、出会いのなかから導き出された、学びや教えを綴った初めての著書――。


≪本書の内容≫
第1章:新しい早稲田をつくる
第2章:置かれた場所で工夫する
第3章:運命の師との出会い
第4章:早大三羽烏と呼ばれて
第5章:流した汗と涙は
第6章:海の向こうの世界
第7章:箱根駅伝と母の言葉
第8章:オリンピックへの道
第9章:指導者への道
第10章:持続可能な組織をつくる

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