せっかくやせたのに、ダンプ松本になるためにまた太る!?

─約2年かけて65kgになった頃に、Netflixシリーズ「極悪女王」の話が舞い込んできたんですね。

Netflixで、鈴木おさむさんが企画・プロデュースで、白石和彌監督、しかも主役のダンプ松本さんの役だって聞いたらやりたい!! って思うに決まってるじゃないですか。でも、2年かけて減らして、また何年かかけて体を大きくして、また戻すとなると、私は一体、何歳になるんやろう? ってめっちゃ悩みました。

ダンプさんは強いプロレスラーさんで、ぶよぶよと太っているわけじゃない。友さんに指導してもらって、トレーニングで体を大きくすることができるならやれるかも、と思ってやることに決めました。

もし、運動なしでただ太るだけやったら、せっかく身についた、食事や運動のいい習慣ができなくなるから嫌やったんです。どれくらい嫌かというと、歯を磨かないまま、好きな人の目の前でしゃべらなあかんくらい! でも、Netflixも食費の補助や月1回の健康診断でサポートしてくれましたし、健康的に増量できたんです。

─プロレスはもちろん未経験ですよね? 今まで格闘技などの経験はありましたか?

空手と柔道、剣道とレスリングと……、を一切やったことがありません(笑)。
長与千種さん主宰の女子プロ団体「マーベラス」さんの練習場に通って、一からプロレスを学びました。入門した練習生と同じように扱ってくれ、できることをちょっとずつ増やしていったんです。筋トレでは、見た目からダンプさんに近づけるために、前ももや肩、背中に筋肉をつけ、人を持ち上げても耐えうるだけの体幹もつけました。

─その成果もあって、熱演が絶賛されていますね。

こんなことを言うのはおこがましいのですが、ダンプさんのフリじゃなくて、自然と自分の感情として湧き上がってきたんです。

ダンプさんは、ジャッキー佐藤さんに憧れてプロレスの世界に飛び込んだけど、なかなかプロデビューできずに歯がゆい時期を過ごします。私も子どもの頃から芸人になりたくて、山田花子さんに憧れてました。NSC(吉本総合芸能学院)同期の中でもわりと早めにテレビに出て、賞もいただいて、順風満帆に見えるかもしれません。でも、自分が思うようにできなかったり、みんなが輝いているのに自分だけが置いていかれるような気持ちになったり、という感覚はいつもどこかにありました。だからその孤独感はすごく共感できたんです。

─ドラマでも描かれていましたが、ダンプ松本さんは悪役レスラーとして、日本中から嫌われていた中でも自分を貫き通しましたが、演じていてどのように感じられましたか?

カミソリ入りの手紙が送られてきたり、車に落書きされたりと、日本中から本気で嫌われ、嫌がらせを受けてきたのに、ダンプさんは自分を貫いていらっしゃいました。今はネットで叩かれることはたくさんありますが、ネットを一切見なかったらゼロですよね。まぁ、それでも見ちゃうんですけど。

私も、「こんなことをやったらネットで叩かれるんやろうな」と思って、自分を貫けない場面があるんです。でも、ダンプさんはそうじゃなかったから尊敬の念しかありません。私も、自分の好きな道は貫き通そうと思えるようになりました。