資産整理の2つのポイント

がんになってから私がまず挑んだのは、預金口座の一本化だ。

リストを作成してあるからと安易に考えていたのだが、これが大変な作業だった。口座と通帳と印鑑。ネット口座の場合は暗証番号が完璧に揃っていないと、本人でさえ金を引き出すのは極めて難しい。

どう難しいのかと言うと、数々の手続きを踏まねばならず、労力と時間がかかるのだ。

一本化を実際にやってみると、時代の変化を強く感じた。

父が亡くなった13年前と今とで一番大きく変化したのは金融機関におけるシステムだ。

わかりやすく言うと、父の時は思い立ったタイミングで銀行の店舗へ出向くと銀行員が対応してくれたが、今は完全予約制。

この予約はWEBから行う必要がある。しかも予約が取れるのが、1週間とか2週間先になることもある。

だから、手続きにとてつもない時間がかかるのだ。

予約ができて、銀行へ出向く日が決まっても安心するのはまだ早い。

私の場合、思わぬ壁に直面した。

昔は銀行で口座を開設した時に使用した印影が通帳に載っていたが、今はセキュリティ対策で、通帳自体に印影を残さなくなった。そのため、どの通帳にどの印を使ったのかわからなくなっていたのだ。ちなみに我が家には印鑑が11本もあった。

この場合、可能性のある印鑑を銀行で一つずつ試してみるしかないのだが、ここで注意すべきは思い込みだ。

思い込みとは怖いもので、こんな猫ちゃんのイラストの入った印鑑を通帳に使用するはずがないと候補から外して銀行に出かけたことがあった。最終的には、そのイラスト入りの印鑑が通帳印だった。

大病してからでは遅い! 森永卓郎が痛感したスムーズな資産整理に欠かせない2つの作業とは_2

どうしてもわからないという時は印鑑変更をする必要があるのだが、同じ「銀行」というカテゴリーであっても、本人確認が必要だと身分証明の提示を求められるところもあれば、求められないところもある。すぐにやってくれるところもあれば、何日もかかるところもある。

忍耐力も求められる。

私は2024年6月にすべての銀行回りの手続きを終えた。だが、ただ一つ、暗証番号がわからなくなってしまったネットバンクが残っていて、ここは、暗証番号を変更できるまで、4週間もかかった。

どの印鑑なのか?
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ここで私の経験から資産整理のポイントを伝えると、

①資産リストは金融機関名と資産内容だけでなく、通帳の保管場所、その通帳で口座を開いた時に使った印鑑、暗証番号をセットとして捉え、資産リストを完璧にしておくこと。

②通帳を一本化する場合には、思いのほか時間がかかることを考慮したうえで、なるべく早い段階で動き始めること。

この2点を守ることが必須だと思う。

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身辺整理 死ぬまでにやること
森永卓郎
身辺整理 死ぬまでにやること
2024/10/15
1,650円(税込)
208ページ
ISBN: 978-4877233310
2023年12月、ステージ4すい臓癌で突然の余命4か月告知。 あした死ぬことがわかった私は終活をはじめた。 モノ、時間、お金、死を目前にしたとき、なにを始めたのか。 著者、渾身の一冊。
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