2000万円が140万円に

さらに、購買力平価から予測される為替レートはいまより3割も円高だから、株価下落と円高のダブルパンチで、NISAでの運用資産は93%減になる勘定だ。

「購買力平価」という言葉になじみのない読者のために簡単に説明しておこう。為替レートは通貨の交換比率で本来、同じものが同じ価格で買える水準に決まる。

たとえば、アメリカで1ドルで売られているハンバーガーが、日本では100円だったとすると、1ドル=100円が購買力平価となる。ただし購買力平価は商品によって異なる。アメリカで1ドルで売られているキャンディーが、日本では80円だったとすると、1ドル=80円が購買力平価となる。

こうした商品ごとの購買力平価を平均したものが経済全体としての購買力平価となる。ちなみにIMF(国際通貨基金)が2024年の世界経済見通しのなかで明らかにしているドル・円の購買力平価は、1ドル=91円だ。

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現実の為替レートが購買力平価と大きく乖離する原因は「投機」だ。為替市場で取引される通貨の99%以上は、貿易に使う実需ではなく、為替を対象とした投機だ。為替がギャンブルの素材として使われているのだ。

ギャンブルだから、ひとたび流れができると、みながそれに乗ろうとして乖離がどんどん進んでいく。それでも経済実態から離れ続けることはできないので、長くても数年から十数年の間には、為替は購買力平価に戻っていく。

だから、いま生じている過度な円安は、必ず購買力平価という本来の姿に修正されていく。それは、日本人の立場からすると、外貨投資は今後の円安修正によって大幅な減価に見舞われることを意味するのだ。

もし、そうなれば、老後のために営々と貯めてきた生活資金2000万円が、バブル崩壊と円高の到来によりわずか数年で140万円に減ってしまうことになる。老後のライフプランが根底から破壊されてしまうのだ。

だから、まず「お金を投資で増やそう」という考えを完全に捨てるべきだ。