「私の代名詞は『彼』です」
開会にあたっては、労働組合の支持を受ける政治家などの来賓挨拶と共に、YDSAの共同代表2人によるスピーチもあった。この時のYDSAの共同代表は、2人ともニューヨークの大学の学生だった。
コロンビア大学の女子学生、リーナ・ユミーンさんと、開会前にインタビューに応じてくれたNYUに通うコローサさんだ。ユミーンさんの挨拶は力強く、政治家を思わせるようなものだった。これに対して、コローサさんはソフトな口調で語り始めた。
「私はジェイク・コローサです。私はhe(=彼)とthey(=彼ら)の代名詞を使います。NYUのYDSAのメンバーで、全国組織のもう1人の共同代表です」
最初の10秒で、彼ららしい演説の切り出し方だと感じた。冒頭で自分が認識するジェンダーを明示したからである。この場合は、コローサさんは、自分を男性と認識しているという意味である。
ジェンダーへの認識が多様であることに配慮した今の時代にふさわしいスマートな表現だ。また、筆者は、保守派の女性活動家キャンディス・オーウェンズ氏のことを思い出した。オーウェンズ氏は「ターニング・ポイント・USA」の集会で、「あなたが使う代名詞は何ですか」という質問が、大学教授などから初対面の学生に行われることに疑問を呈していた。
仮に、オーウェンズ氏や保守派の若者たちが、この集会に来ていたらどんなことになっただろうか。コローサさんのスピーチが始まってからわずか10秒のところで、ブーイングの声をあげたり、大声で「神様は男と女しか創っていない」と絶叫したりしたかもしれないなどと想像した。