「間違った正義感って強いから」

犯行準備を長期間、一人で黙々と続けた臼田容疑者の行動は、故・安倍晋三元首相を銃撃し殺人罪で起訴された山上徹也被告の犯行を彷彿とさせる。

ただ、山上被告は自分の家庭を崩壊させたと恨む旧統一教会を応援したとみなした安倍氏を狙ったと、その動機を隠そうとしないのと対照的に、臼田容疑者は犯行を通じて達成しようとした目標を話そうとしない。

ガレージ内にあった瓶(撮影/集英社オンライン)
ガレージ内にあった瓶(撮影/集英社オンライン)

法律を含む多くの知識をインプットし、一時は選挙にも出ようとした臼田容疑者はなぜ動機も明らかにしない襲撃に走ったのだろうか。

これについて篤伸さんは気になることを言う。

「私は、医療政策は同意できないのですが、原発廃止の主張に共鳴し共産党を支持していて。選挙では『共産党に投票してくれ』と息子に書き置きするんですが、息子は選挙になんか行きません。選挙で(社会を)変えるとかなんとか真面目に考える人間じゃないです。(2009年の出馬準備も)本気で選挙に出る気なんてまったくなかったね」

死刑廃止運動や反原発など、臼田容疑者がかつて社会運動に関わったのは、幼いころから持っていた正義感のためだ、と話す篤伸さんは、こうも言う。

「間違った正義感って強いから。法律に則った形で仲間を作っていくとか、そういうのは面倒くさいというのがあるし、精神的なゆとりがないから、自分一人で法を越えてもやっちゃうということじゃないですかね」

臼田容疑者は2012年、大阪市で行われた震災がれきの試験焼却に向けた住民説明会の会場で反対デモを行って逮捕、起訴され、執行猶予判決を受けている。篤伸さんによれば臼田容疑者はその時も黙秘を貫いた。

「今回も黙秘することは分かり切っている。確信犯だから。弁護士もいらない、と言うはずです」

そう話す篤伸さんは「(今回の行動は)自公政権に対する反感ということでスタンドプレーをしたということに尽きるんじゃないですか」とも言うが、これも推測にすぎない。

自分もかつて出馬意思を示した衆議院選挙のさなかに、政権与党の本部と政府の中心を襲った理由は何なのか。事案は重大で、動機が解明できなければ禍根を残しかねない。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

若かりし頃の臼田容疑者(家族提供)
若かりし頃の臼田容疑者(家族提供)
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