「5年以上前から準備していたと思います」
臼田容疑者は、まず司法書士の資格に挑み、これは断念して後に行政書士を狙い、合格して資格を取っているという。ただ、行政書士になる気はなかったようだ。
2021年1月、臼田容疑者のSNSには、以前勤めた運送会社で給料の未払いがあったとして労働基準法違反で刑事告訴したものの「非常に残念ながら不起訴になりました」との書き込みがある。篤伸さんは「そういうこと(刑事告訴)をするために勉強したわけです」と言う。
反原発運動の現場をともにしたこともあった父子の関係は、臼田容疑者が部屋にこもるようになったあと変化し、近年は会話がなくなっていた。「聞いても言わないですし、必要なことはメモ用紙にメッセージを書いて息子の目に留まるように置いておくんです」と篤伸さんは話す。
そして、二人の間がこうした関係になってしばらくしてから、家の中に“異物”が現れるようになる。
「5年以上前からだったと思います。ポリタンクや何に使うのか分からない工具を見るようになりました」
そのポリタンクこそ、首相官邸前で炎上した車の中にあったガソリン入りのポリタンクと同じものだった。
「あの時から今回の事件の準備をしてきたんだと思いますよ」
そう篤伸さんが見る臼田容疑者は、今年に入ってさらに動きを見せる。
「息子はコロナ禍の時から、複数のサービスを掛け持ちして飲食の宅配をやっていました。週に5、6日は終日働いていました。
それが、半年ほど前までにこれらの仕事を全部やめたんです。以前は心配するほど毎日酒を飲んでいたのですが、同時期に酒量もかなり減りました。このころから計画を具体的に練っていたんじゃないですかね」
友達付き合いをやめ、同居する父との会話も拒んでいた臼田容疑者。周囲との対話がもしあれば、事件の兆しが表れるか、襲撃自体を思いとどまったかもしれないが、そうした機会はなかった。
父の話に耳を傾けると、その背景に、幼少期からの体験が暗い影を落としている可能性が見えてきた。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班