「行政は透明性を担保してほしい」

当然、上記の懸念が指摘されるスダチと連携を図ろうとした板橋区にも疑問が残る。同じく質問状を提出したNPO法人 フリースクール全国ネットワーク・中村尊氏が指摘する。

「今回、板橋区とスダチが連携した実績が残ってしまうと、他の自治体にも同様の取り組みが波及してしまう可能性を自覚してもらいたいです。

それに不登校支援に取り組む我々からしたら、支援先を1カ所に絞るのは危険なこと。

もしかしたら板橋区は、他の民間団体ともやり取りをしていたのかもしれないですが、表面的にはスダチのみと協力しているような印象を与えてしまった。

我々のような非営利団体も、不登校問題に取り組んでいくためには、行政や民間と協力していかなければならない。

それゆえに、行政は透明性を担保してほしいのですが、なぜ区の不登校ガイドラインの方針と異なるスダチだけと提携しようとしたのか……。

一連の説明をしないと、安心して行政を頼ることができなくなってしまいます」

板橋区に提出した公開質問状の一部
板橋区に提出した公開質問状の一部

板橋区が想定外だったこと

では、板橋区の見解はどのようなものか。一連の経緯や公開質問状を受けたことについて、板橋区教育委員会指導室の冨田和己室長に話を聞いた。

──今回の件について、どのような経緯があったのか。

和己​氏(以下同) きっかけは2023年の10月31日に、とある区議会議員からスダチを紹介されました。我々のような行政としては、生活リズムや親子関係などにまで踏み込んで不登校支援のアプローチをするのは難しい。

そこでスダチのように、保護者に働きかけて親子関係を改善しつつ、子どもを自立させるやり方について、ご意見をうかがいたいという運びとなりました。
 

──スダチが板橋区と連携するプレスリリースを出したことについては?

スダチがリリースを出したことは、想定外のことで驚いています。リリース公開日や文面などに関する事前説明がなかったことに加え、我々としても連携を強化するという認識はなかった。文面や文書で誓約を交わしたわけでもなかったです。

──実際のところ、スダチとはどこまで話が進んでいたのか。

板橋区としては、スダチのプログラムを全校規模で展開したり、そのために区が予算をつけたりすることは考えていませんでした。

実際のところ、研究段階の取り組みとして、今年6月に学校長の理解をえられた区内の2校をスダチに紹介しました。

その後7月に、1校の保護者9名にチラシを配布し、そのうち1名がスダチの説明を聞きたいという申し出があったという段階でした。

──今回の騒動についてどう説明するか。

板橋区としては、スダチの実情を理解していない状態で、慎重に話を進めていかなかったことを反省しております。

区教委としては、少しずつアプローチしていきたいという段階で、細部にわたっての内容確認が不十分でした。そのためスダチとの合意や共通理解がえられず、多方面にご迷惑をおかけしてしまいました。