これまでは円安による利益押し上げ効果で誤魔化すことができていた?

円高の悪夢も牙をむく。

ソニーのゲーム&ネットワークサービス分野は、2024年3月期の営業利益が前期比16%増の2902億円だった。402億円の増益だったことになるが、そのうちの386億円(96%)が為替の影響によるものなのだ。

日本銀行は7月31日の金融政策決定会合で0.25%政策金利を引き上げた。8月5日には一時1ドル141円まで円高が進行している。

ソニーは8月7日の2025年3月期第1四半期決算発表において、急速な円高について言及しており、その一部を引用する。

“8⽉以降にドル円が 10 円円⾼に振れ、ユーロ円もこれと同様に動いたと想定すると、為替感応度としては連結ベースで 700 から 800 億円損益が悪化することになるが、為替変動前に⼀部為替予約もしており、製品の価格調整やコストの⾒直しも実施するので、この感応度分析の数字が業績に直接的に影響するとは考えていない。”

円高がPlayStationの価格改定につながっているのは明らかだ。

【販売価格8万円】ソニーPS5大幅値上げに「3つの要因」…迫りくる「Nintendo Switch後継機」の脅威も_4

ソニーはゲーム&ネットワークサービス分野の今期の営業利益を前期比7%増の3100億円と、増益予想を出している。円安による差益に期待ができないとなれば、値上げをする以外に手が打てなかったということだろう。

急速な円高による営業利益へのマイナス効果が抑えられるというのはその通りかもしれないが、増益効果が働かないという点は見逃せない。下半期からの値上げで、今期1割近い営業増益を達成できるのかは注目のポイントとなるだろう。

為替に関連する別角度のもう一つの問題点として、訪日外国人によるゲーム機の持ち帰りがあった。PlayStation5はアメリカだとおよそ500ドルで販売されている。1ドル145円換算で7万2500円だ。値上げ前の日本価格は6万6980円。インバウンド需要が盛り上がると、ソニーは結果的に損をするということにもなりかねない。

ドル目線だと、今回の値上げは適正価格に戻ったといえそうだ。

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市場の期待が高まるNintendo Switchの後継機

最大のライバルである、任天堂も脅威の一つだ。任天堂はすでにNintendo Switchの後継機を2025年3月期中に発売すると正式に発表している。

古川俊太郎社長は6月27日の定時株主総会において、後継機が現時点において、部材の不足等によって生産に大きな影響を与えるとは考えていないと明言している。コロナ禍の半導体不足でゲーム機の流通が滞り、転売も横行することでゲーム機の市場価格が高騰。消費者にゲーム機が行き渡らなくなるという負のループが形成されたが、現在の任天堂はその課題を克服する術を磨いているようだ。

市場に大量供給できる体制をすでに築いているのだろう、後継機の爆発的なヒットを予感させるものだ。

Nintendo Switchは、今期中に累計出荷数が1億5000万台を超える見通しのモンスター級のゲーム機で、後継機が来年に発売されるとなれば、さらにPlayStationが苦しい立場になることも十分にありえる。

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言うまでもなく、Nintendo Switch販売後の任天堂は乗りに乗っている。鉄板ともいえるマリオシリーズやポケットモンスターに加え、スプラトゥーン、ゼルダの伝説、ピクミンを大ヒットIPに育て上げたのだ。

PlayStationにおいては、看板タイトルの一つであるスクウェア・エニックスのファイナルファンタジーシリーズ最新作「FF16」の販売が弱含んでいるが、スクウェア・エニックスはPlayStation以外のプラットフォームでもゲームを開発する方針を発表している。ソニーがこの逆風をどう乗り越えるのか注目だ。

取材・文/不破聡 写真/Shutterstock