最初にオーバードーズしたのは12歳

「ADHDのインチュニブ、安定剤のクエチアピン、睡眠薬のニトラゼパム……」

耳慣れない処方薬の名称を羅列しながら、谷口麗さんは、いくつもの薬をテーブルの上に広げていく。現在も、6~8種類ほどの向精神薬を服用している麗さんだが、これでも「かなりマシになったほう」だという。

「一時期は、半月分の睡眠薬を過剰摂取して丸2日眠ったり、ADHDの処方薬を飲みすぎて4日間動けなかったり……。もうあんな散々な思いはしたくないですね」

今だからこそ笑いながら話す麗さんだが、かつては常習的にオーバードーズ(以下、OD)に耽っていた。

かつてODしていたころは、複数の処方薬をちゃんぽんしていた
かつてODしていたころは、複数の処方薬をちゃんぽんしていた
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なぜ麗さんは薬物依存に陥ってしまったのか。さかのぼって、まずODするようになったきっかけを聞いた。

「私が最初にODしたのは、12歳のときでした。当時は、摂食障害を患っていて、強迫性障害や気分性障害を抑える薬として、安定剤を処方されていたんです。

担当医は毎回1ヶ月分ぐらい出してくれていたので、飲み忘れる日があったり、副作用がきつい日は飲まなかったりとかで、薬が余るようになるんですね。それで服用量の3~4倍ぐらい飲んだらどうなるんだろうとある日ふと思い、つい好奇心で……」

当時は、まだSNSが浸透していなかったものの、麗さんは「2ちゃんねる」などを見て、ODの存在を知っていたという。処方薬を過剰摂取することで、「多幸感を味わえる」、「気分がハイになる」という文句に誘われ、現実逃避の一環として手を出すようになる。

「最初は軽い気持ちで始めたODですが、そのうち深く眠れることに気づき、どんどんハマっていきました。強迫性障害を患っているからか、年中不眠にも悩まされていたのですが、眠りにつくまでの記憶もないほどぐっすり眠れるので、ちょうどよかったんです」