学業への悪影響に外資系への流出…就活は問題だらけ 

久保さんは「就活の過程」というこれまで“無駄”だと思われていた部分に注目し、お祈りメールを次の企業へのエントリーの機会にする仕組みを作り出した。しかし、就活にはまだまだたくさん解決すべき問題や課題が存在する。そのひとつが学業への悪影響だ。

「本来であれば4年生は大学生活の集大成となる学年です。しかし、就活のために3年生の3月から(早い人であれば夏休みから)、数カ月も時間を割かれてしまうので、満足に研究や卒論執筆に集中できないのが現状です。

東京大学の調査で、就活が日本の大学の学術レベルを下げているという検証データもあるほどです。卒論がある程度終わる4年の9〜12月に就活の時期をずらすといった対策をしないと、学術レベルはこのまま落ち続けてしまいます」

ABABAの事業展開。就活生ユーザーは2年で6.2倍に、利用企業数は4.9倍に
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2023年10月、東京大学は2024年度大学卒業・修了予定者の就職・採用活動について、採用選考活動や内定後の研修などにより、学生の学修環境を損なうことのないよう要請する文章を掲載した。大学側が企業に就職・採用活動開始時期などの遵守や学業への配慮を求めるほど、就活が学生の大きな負担になっているのが現状だといえる。

また、近年ではコンサルティングやITといった業界の外資系企業に優秀な学生が流れる傾向があるという。こうした状況に、「日系の大企業は自然と大勢の応募者が集まることもあり、ネームバリューに慢心して魅力的なポジションや仕事、給与などをうまく提示できない。その結果、優秀な人材を外資系企業に取られている」と久保さんは分析する。

「日本で育って日本で学んだ学生が外資系企業に取られてしまい、外国の利益のために働いている構図は大きな損失です。私としては日本を支える日系企業に優秀な学生が就職してほしいです。日系企業が外資に人材を取られないためには、3年生の秋ごろに就活を始めるアクティブ層へのアプローチや、スキル重視の専門職ポジジョンを積極的に打ち出すといったプロモーションなどをすべきだと思います」