Aさんの遺族は音声データを提出、県警も“一人”を聴取
だが、データ開示で揺さぶられてもAさんは百条委でシロクロをつけようとしたことは間違いないと関係者は口をそろえる。
「彼は『準備は着々と進めている』と言っていました。だからAさんが死ぬことを考えていたなんて、まったく想像できなかったですね」
そう話すAさんを知る元同僚の男性は、自死の選択は抵抗勢力の圧力に押しつぶされたのではないと言い切る。
「Aさんは告発文書を書いた時、向こう(知事や側近)はもっと早く白旗を上げると思ったことでしょう。あんなむちゃくちゃな記者会見やって、平気な顔してここまで引きづるなんて、誰も思ってなかったですからね。
A君とは長年の付き合いがありましたが、ここまでやっても本当のことを言わない知事らに対して、死をもって諫めるという要素があるんじゃないかな、と私は思っています。義理堅くて間違ったことは絶対に許さないという男でしたからね。
維新が相当妨害工作をやってきてましたから、百条委に出た時に妨害工作で場が乱れるのは明らかじゃないですか。だからそこはきっちり…。自分の命かけてやったと私は感じましたね」(元同僚の男性)
死をもって諫める、との見方には最初は首を縦に振らない知人もいたようだ。だが、Aさんが出席予定だった7月19日の百条委に向け遺族が提出した資料の中身は、この分析があながち間違っていなかった可能性を示唆している。
「Aさんの遺族は7月12日に百条委にAさんの陳述書と、斎藤知事が県内の出張先で地元特産のワインを地元首長に『まだ飲んだことがない。折を見てお願いします』と求めた際のものとする音声データを提供しました。
同時に『死をもって抗議する』『百条委は最後までやり通してほしい』とのAさんのメッセージも伝えています」(在阪記者)
Aさんの事情聴取を行い、告発文書にも登場する片山副知事は辞意を表明。斎藤知事は県職員労働組合から辞職要求を受けたほか、選挙で推薦した自民党県連からも事実上の辞職勧告を突きつけられているが、辞任は頑強に拒んでいる。
7月16日の記者会見でも「県政を前に進めていく」と繰り返し、Aさんが亡くなったことには「百条委への精神的なプレッシャーがあったと思う」と口にした。
「斎藤知事は全く辞める気配がなく、混乱は続くでしょう。優勝パレードの寄付疑惑やパーティー券購入強要は、県の意向を気にしなければいけない関係者の告白がなければ立証は難しく百条委で解明できるかどうかはわかりません。
しかし、兵庫県警は告発文書に書かれた贈答品疑惑で“4人組”の一人を事情聴取しています。これを入り口に捜査が展開される可能性もあります」(社会部記者)
AさんとBさん。二人の幹部職員の命が消えた兵庫県庁で何があったのか、徹底した解明が必要だろう。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班