頼れるパリの薬剤師さん
パリの街角には、よくもこれだけ、というくらい薬局がたくさんあります。そして女性、特に働く女性に重宝されています。そんなパリの薬局に所狭しと並んでいるのは、日本のようにメイク用品ではなく、スキンケア・グッズです。
意外と知られていないことですが、フランスは「デルモ・コスメティック」という、医療とコスメの間に位置するカテゴリーが存在するくらい、この領域の研究が発達している国です。
このため、洗顔料、クレンジングオイル、化粧水、保湿クリーム、角質ケアなどのスキンケア・グッズはとても充実しています。私など目が回ってしまうくらい、ありとあらゆる種類の製品が薬局に鎮座しています。
パリジェンヌは誰もが試行錯誤を重ねながら、自分の肌質や用途に合う製品を開拓しています。ニキビやアレルギー、日焼けによるシミやしわ……。肌のトラブルに限りがないのは万国共通ですが、そんな彼女達の最大の味方は薬剤師さんです。
子供の頃からアトピーに悩んできた私も、顔なじみの薬剤師さんに何度助けてもらったかしれません。髪の毛をいつも引っ詰め、薬剤師というよりはバレエ教室の先生のようなそのマダムは近所の人気者です。
彼女目当てに来るおなじみさんも多いので、長蛇の列が出来ることもしばしばです。
私の乾燥肌に効く日常使いの洗顔フォームから、昼用、そして夜用の保湿クリーム、さらには繊細な瞼専用のクリームまで、薬剤師さんは事細かに選んでくれます。私が怪我をした時には、「傷痕にならないように」と、とっておきのクリームを勧めてくれました。
あまりにもしょっちゅうお世話になっていたので、私がある日、ため息交じりに
「マダムがいなくなったら困っちゃうわ。自分じゃ何を選んでよいのかわからないんですもの」
そう漏らすと、彼女は難しく考えることはないと言います。そして声をひそめ、「店長に怒られちゃうけど」と前置きしながら囁きました。