売春すればお金が稼げてしまうため歯止めが利かなくなった

アルコールや薬物、ギャンブル依存などを専門的に治療する医療機関は数多く存在するが、神奈川県横浜市にある「大石クリニック」は、ホストに依存する女性患者、またはその親が訪れる外来棟をはじめ、「回復施設」と称したグループホームなどの施設を複数展開している。

同クリニックの大石雅之院長は、ホストに強く依存してしまい、自らの衝動を抑えられない「強迫的性行動症」と診断された500人以上の患者の治療にあたってきた。

取材に応じる大石医師(撮影/集英社オンライン)
取材に応じる大石医師(撮影/集英社オンライン)
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――俗にいう“ホス狂”の診断名である「強迫的性行動症」とは、どんな病気なのでしょうか。

大石雅之院長(以下同) 医学界では、世界保健機関(WHO)が病気を分類して初めて病名がつきます。2018年6月にこの国際疾病分類が最新版(ICD-11)へと改訂され、ホスト依存は「性嗜好障害・強迫的性行動症(性依存)」という病名になりました。

この病気は、芸能人やスポーツ選手によるセックス依存や度重なる浮気行為が報道されたことで昨今話題になりましたが、端的に言うと「やめたいのに性的行動が抑制できなくなる」という状態の一種です。

従来は男性の風俗やキャバクラ依存が目立っていましたが、もちろん女性にも生じることがあります。その一つが、近年問題となっている“ホス狂”です。

――ホストクラブは50年以上前から存在していますが、なぜ昨今になって、悪質な売掛金による女性の性的搾取が社会問題にまで発展したのでしょう。

私の知る限り、30年ほど前にも「娘がホストにハマった」というケースはありました。なので、これまでも闇に消えていただけで、同じような問題は存在していたはずです。

当時との大きな違いとしては、現在はお金のない若い子でも、パパ活や交際クラブといった風俗以外の手段で気軽に稼げるようになってしまい、それにホストが便乗する図式が出来上がったことが挙げられます。

社会性がなくても、売春すればお金を稼げてしまうため、歯止めが利かなくなってしまいます。

大久保公園で“立ちんぼ”女性に声をかける中年男性(撮影/集英社オンライン)
大久保公園で“立ちんぼ”女性に声をかける中年男性(撮影/集英社オンライン)

――こちらのクリニックには、ホスト依存になってしまった患者本人が1人で診察に来るのでしょうか?

多くの場合は、患者の親だけが来たり、ホストに捨てられ傷ついた状態の娘さんが親と一緒に来たりしますね。

本人が来るとしても、かつてホストクラブに通っていた子が、次は薬物依存になっていたり、市販薬をOD(オーバードーズ)して精神病院に入退院を繰り返したりしたあとに訪れてくるケースがほとんどです。