増加するキョンの目撃情報
この褒賞金制度は千葉県からのこれ以上の侵入や、茨城県内での繁殖に抗うための水際作戦だが、目撃情報のあったエリアに住む住民たちはキョンをどう見ているのか。
2020年12月にイノシシ捕獲用に設置したトレイルカメラに映ったキョンの撮影に成功した茨城県猟友会の八郷支部会長で石岡市鳥獣被害対策実施隊長の鈴木哲夫さん(81)に話を聞くと「キョンの目撃情報は明らかに増えてる。俺は、もう繁殖してるんじゃないかと思うけど」と話す。
「キョンはイノシシと違って人家近くでの目撃情報が比較的多いね。石岡市周辺でも朝日トンネル周辺で見たとか、いばらきフラワーパークに向かう道で見たとか、それも朝も夜も関係なくよく聞きます。
まさに今朝(6月13日)、鳥獣被害対策の活動に同行するテレビ局のカメラマンが、石岡市八郷地区の民家も並ぶ銘菓屋のすぐ横にいるのを見たって言ってたよ。そのカメラマンはキョンを専門に撮ってる人だから、見間違うわけないって興奮気味に言ってたよ」
また、鈴木氏の長年の知人で同じく茨城県石岡市で栗農家を営む斉藤豊さん(80)は2週間ほど前に2匹のキョンを見たようだ。
「うちの栗の木の柵を、犬と同じくらいの大きさの、犬でもないやつがピョンっと飛び越えたのを見たんですよ。尻しか見えなかったんだけど、あれは親子だったのかなあ、2匹連れ立ってました。鈴木会長に聞いたら『それはキョンだろうな』と。
そうこうするうちに、つい3日くらい前、家庭菜園で作った大きくなりすぎたキュウリを木の切り株の上に置いてたら、その翌日の朝に食われてたんですよ。
これも、どうやらカラスがつついたわけじゃないようで、アライグマもハクビシンもキュウリなんて食べないから、もしかしたらキョンじゃないかなーって話をしてたんです」
記者が以前、千葉県内でキョンの取材に当たった際は、住宅街を平然と歩いており、人間を恐れる素振りも見せなかった。
住民たちからは「夜になるとギャーギャーと不気味な鳴き声で鳴くから憂鬱になる」との意見もあがっていたが、キョンは一度定着すると完全な駆除はほぼ不可能だ。茨城県内でのキョンの動向が気にかかるところだ。
取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班