提供スピードの引き上げに挑戦中
企業努力も大きい。それは値上げを行なっても客数が増加しているところによく表れている。その大前提として、大戸屋が支持されている要因は味のよさだ。
シルミル研究所は全国の女性を対象とした定食チェーン調査を行っている(「「定食チェーン店」に関する調査」)。それによると、定食チェーン店リピート率の1位が大戸屋だ。行く際に最も重視することとして、トップが「味」の27.2%。次いで「価格」が18.4%と続く。「アクセスのよさ」は14.7%とさほど高くない。
大戸屋の美味しさにひかれてリピート利用する姿が浮かび上がってくる。実は買収後の大戸屋はリピーター向けの集客施策を強化していた。それが提供スピードの削減だ。
2023年3月期の最短店舗の平均提供時間は6分54秒。2020年11月時点では7分21秒だった。30秒近く早まっている。全店平均では5秒削減した。
国内で300以上あるチェーン店において、提供スピードを上げる取り組みは極めて難しい。ましてや敵対的買収後であれば、従業員のモチベーションも上がりづらいはずだ。作業効率を上げることで、料理の質や味が落ちることもありえる。たかだか平均5秒の削減だと感じるかもしれないが、これだけマイナスになりえる要因が揃う中で、顧客の満足度をキープしつつ、提供スピードを上げたことは成果として大きいだろう。
大戸屋は次なる目標として、提供時間が12分以上の店舗の撲滅を目指すという。それにより、全国平均で40秒の短縮になる。提供時間が短縮できれば、顧客満足度の向上、高回転率の実現、店舗に入れない顧客の待ち時間の削減など、プラス効果は大きい。