コロナ禍の最悪期に立ち上げた売上目標をクリア

2020年に焼肉店「牛角」などを運営するコロワイドが、TOB(公開買付け)によって46.77%の大戸屋の株式を取得。連結子会社化した。これはいわゆる敵対的買収(買収者が買収対象会社の取締役会の同意を得ないで買収を仕掛けること)で、これまで国内の外食企業では前例のないものだった。

コロワイドは同年11月4日の株主総会で、TOBに反対していた元社長・窪田健一氏など取締役10人の解任と、新たな取締役選任を求める議案を可決する。新社長に就任したのは蔵人賢樹氏。コロワイドの創業者で会長である蔵人金男氏の長男だ。子息が業績回復の実績を作り、後継者として相応しい人物に育てようとする狙いがひしひしと伝わってくる。

その優れた経営手腕は数字によく表れている。

大戸屋は2021年5月に新中期経営計画を策定した。コロナ禍で先の見通しがまるできかなかった時期だ。そのさなかで、2024年3月期の売上高を258億4500万円、EBITDAを20億7300万円とする目標を掲げた。2024年3月期の売上高は目標を7.9%上回る278億9400万円。EBITDAは19億5900万円だった。EBITDAは目標値を5.5%下回ったが、誤差の範囲といって差し支えないだろう。

本業での稼ぐ力を表す営業利益率の回復は特に目覚ましい。買収前の2019年3月期は1.6%。2024年3月期が5.9%だ。2025年3月期は5.8%を予想している。

※決算短信より筆者作成
決算短信より筆者作成
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営業利益率を高めた主要因は、原価率を下げたことだ。2024年3月期の原価率は40.5%。2023年3月期が43.5%。買収前の2019年3月期が43.1%だった。3ポイント程度下がっている。
コロワイドの傘下に入った後で、仕入れの取引条件の見直しやメニュー構成の見直し、物流の集約などコスト削減に務めていたが、値上げによって原価率の低減に成功したように見える。価格改定に成功したのは、市況と企業努力の2つの要素が大きい。