コレステロール不足で生じるデメリットとは?

それどころか、コレステロール値を下げすぎることで生じるデメリットのほうは、驚くほどたくさんあります。

まず、コレステロールは男性ホルモンと女性ホルモンの両方の材料になるので、それが不足すれば、当然これらのホルモンの分泌量も減ってしまいます。

男性ホルモンは女性の体内にも存在し、意欲や行動力を高めるもとになります。60歳以降の女性を元気にするホルモンでもありますから、その材料が不足すれば、せっかく元気になるはずなのに元気になれないということが起こります。

また、ただでさえ年齢とともに減っていく女性ホルモンがさらに減るとなれば、肌のツヤが失われるといった美容面でのトラブルは避けられないでしょう。

女性ホルモンが減ることでの深刻な問題としては、骨粗鬆症になりやすくなるということがあげられます。

骨粗鬆症というのは高齢女性が罹患しやすい骨の中がスカスカになってもろくなる病気ですが、これを発症すると腰や背中の痛みに悩まされるようになります。

痛みと骨がスカスカになっているせいで腰が曲がってしまうこともあり、そうなると一気に老け込んだ印象になってしまいかねません。また、骨が弱くなればちょっとしたことで骨折しやすくなるというのも、高齢者にとっては大問題です。

写真はイメージです
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がんやうつのリスクまで高まってしまう

さらにコレステロールは免疫細胞の材料でもあるので、不足すれば免疫機能の低下という重大な問題が起こります。

免疫機能が下がれば、当然コロナウイルスをはじめとする感染症にもかかりやすくなりますが、実はがんのリスクも高まります。ハワイの研究では、コレステロール値が高い人ほどがんになりにくいという結果も出ているのです。

そもそも免疫機能というのは放っておいても年齢とともに下がっていく傾向にあるのですから、コレステロールの不足によってますます低下してしまうとなれば、高齢者にとってはまさに死活問題になると言っても過言ではありません。

また、コレステロールにはたんぱく質を原料につくられる「幸せホルモン」のセロトニンを脳に運ぶというとても重要な役目もあります。だからコレステロールが不足すれば体内のセロトニンがうまく脳に運ばれず、「うつ」の原因になり得ます。

実際、コレステロール値が低いグループは高いグループよりもうつ病にかかりやすいというデータもあり、これまでたくさんの「老人性うつ」の患者さんたちを診てきた私自身の経験からしても、コレステロール値の低い人はうつからの回復が遅れるという実感があります。