東大入学後に感じた同級生との“ずれ”

R.Shimada氏が感じた東大の同級生との“ずれ”はたとえばこんな場面だ。

「基本的に東大に入学してくる学生は名門校の出身です。名門校には、学問をする土壌が生成されています。私が高校時代に言われたような『ガリ勉』などの揶揄も少なく、学びたいことを自由に学べる雰囲気があるわけです。これは存外大切なことです。しかし、名門校出身の同級生たちは、それを重要なことだと考えていません。

だから、貧困家庭について『ちょっと貧しいくらい』と軽く考えていたり、『名門校であっても魔法のような授業が受けられるわけじゃないから、結局東大に入れない人は自分の努力不足』と考えている節があったりします。しかしそれは違います。本当の貧困を知らない人が頭で考えられるほど、貧困は生ぬるいものではないし、東大に入学できたことのすべてが自分の努力のおかげだと思うのも傲慢だと私は考えています」

本人の努力だけでは決して埋まらない差。その距離は通常縮まることはない。それに気づきもせず、認めようともしない同級生たちに対し、R.Shimada氏は苛立ち続けた。

R.Shimada氏
R.Shimada氏

東大には、尊敬できる人物はいなかったのか。

筆者の問いかけに、R.Shimada氏は「学力面において尊敬できる人物は残念ながらいませんでした」と断じたのち、間髪入れずに「ただ別の面で尊敬できる仲間はいました」と続けた。

「東大には学生寮として、豊島国際学生宿舎(豊島寮)と三鷹国際宿舎(三鷹寮)が存在します。1~2年生までの期間は教養学部に在籍して駒場キャンパスで過ごし、3年生の進学選択のタイミングで本郷キャンパスへ移ります。

このうち主に駒場キャンパスに通う学生のための寮として三鷹寮があり、本郷キャンパスに通う学生のための寮として豊島寮があります。

私の在学中、突如として豊島寮の改装に伴う寮の家賃の値上げの話が持ち上がりました。従来の月額家賃の10倍近くになる計画だったと記憶しています。そのとき、建築学科の大学院生が大学側との交渉の矢面に立ち、建築基準法などの専門的な観点から、改装が必ずしも必要ではないことや値上げの合理性がないことなどを指摘し、結局値上げの話は立ち消えになりました。

理不尽なことがあったとき、多くの人たちを代表して誰かが怒らなければ不利益な変更をされてしまうのだと実感した瞬間でした」