人材紹介業者への支払いが経営を圧迫
2024年1月、東京商工リサーチが公表した「2023年『老人福祉・介護事業』の倒産、休廃業・解散調査」によると、2023年に倒産した老人福祉・介護事業は122件で、過去2番目の多さだったという。このうち訪問介護事業者の倒産は67件にのぼり、過去最多を大幅に上回った。倒産まではいかないものの、休廃業や解散をした介護事業者も、最多の510件を記録。主な原因には、「販売不振(売上不振)」「他社倒産の余波」などが挙げられている。
東京商工リサーチは、ヘルパーなど介護職員の人手不足や高齢化が深刻であることなどを挙げ、「2024年は一段と小・零細事業者の倒産、休廃業・解散が増勢を強めるとみられる」と予測している。
人材不足による弊害もすでに生まれている。第二章(編注:同書 第二章「介護ビジネスは儲かるのか?」)で紹介した老健の責任者である坂本さんは、介護業界の現状をこう解説する。
「どこの施設も人が集まらない状況は年々深刻になっており、特にこの5年は採用コストが高くなってきています」
厚労省が発表した「厚生労働白書」(令和4年版)によれば、介護関連職の有効求人倍率は、2005年が1.38倍だったのに対し、2021年には3.64倍と大幅に増えている。特に東京は4.91倍、大阪が4.09倍と深刻だ。求人広告を出しても応募者が来ないため、介護人材の派遣や紹介をしてくれる業者を使う施設が多いと坂本さんはいう。
「こうした業者を使って介護スタッフを1人雇う場合、業者にスタッフの年収の2、30%を支払うことになるんです。年収400万円なら80万〜120万円の支払いになる。最近では年収に関係なく、1人につき100万円の紹介料を業者に支払うというのが、この周辺での相場。そんな高額の金を払ってでも、人を雇いたい状況なんです」
高額の紹介料が施設の経営を圧迫するという、理解しがたい構造が出来上がっているのだ。