怒りは愛からしか生まれない

喜怒哀楽の中で人間が最も想いを乗せられる感情は「怒」…怒りを文章にする際、何よりも大切にするべきたったひとつのポイント_4
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これが「怒」の文章です。

前半は「エモい」がどういう言葉なのかを的確に説明しつつ、

特に終わってんのが音楽な音楽。アホみたいな顔して口半開きで「この曲エモいんや〜〜〜」つってヨダレ垂らして。最近『おジャ魔女カーニバル!!』がエモいとか言われててマジで気狂いそうになったわ。頭カラッポで聴けるバカソングの代表みたいな曲だろあれ。テメェらがのたまうその「エモい」の定義だとどっちかって言ったらEDの『きっと明日は』のほうだろうがいい加減にしろよニワカ共がよマジでお前らの人生ポポリナペーペルトさせてやろうか?

と、具体的に例を出し、その矛盾点を残らず指摘していきます。

中盤は「エモい」がいかに意味のない言葉なのかを指摘しつつ、ターゲットを「プロなのにエモいを使ってしまう書き手」にスライドさせていきます。

そして終盤は自分は絶対に「エモい」を使わない、使うくらいなら死んだほうがマシだ、と吐き捨て、終わる。しかし、過去に筆者自身が「エモい」を使っていたという、今まで書いた言葉が特大ブーメランになって自分に突き刺さる衝撃の展開で本当の終わりを迎える。

ただ、勘違いしないでください。

なにも全ての人間がこんな気色の悪い文章を書いたほうがいい、ということでは決してありません。私は羞恥心やプライドなど、人間が最低限の社会生活を送る上で必要なものを全て捨てて「ネット上のウケ」だけに特化した結果、こうなってしまったのです。絶対に〝こう〟ならないでください。あなたには、あなたの「kansou」を築き上げてほしい。

要するに、自分の文章の「感情」や「熱」がどれだけ読者に伝わるか、という話なのです。

怒りの文章を書く際のポイントですが、何よりも大切なのが、「対象」を深く知ることです。

〝故に曰わく、彼れを知りて己れを知れば、百戦して殆うからず。彼れを知らずして己れを知れば、一勝一負す。彼れを知らず己れを知らざれば、戦う毎に必ず殆うし。〟

これは孫子の中でも最も有名な教訓のひとつです。

敵情を知り、味方の事情も知れば100回戦っても危険がなく、敵情を知らないで味方の事情を知っていれば勝ったり負けたりし、敵情を知らず味方の事情も知らないのでは戦うたびに必ず危険になってしまう。

たとえ心から憎き相手だろうと、知らなければ何も言うことができないし、ましてや文章で言い負かすことなど到底できません。

嫌いな食べ物があるのなら、嫌いな食べ物を使った料理を全て食べる。嫌いな歌手がいるのなら、その歌手がリリースした楽曲を全て聴く。そうすることで初めて嫌いなものの「どこが嫌いなのか」を明確に言葉にすることができるのです。

逆に言えば、何も知らずにイメージだけで書く「怒り」の文章にはユーモアも説得力もありません。ヤフコメを思い出してください。適当に書いたアンチコメントほど価値のないものはない。人を楽しませる怒りは愛からしか生まれないのです。

私はこの文章を書いたとき、Xやnoteで数え切れないほどの「エモ文章」を読み、研究し、口から血が出るほど怒りのパワーを溜めて書きました。私ほど「エモい」のことを考えている人間はいません。私は書こうと思えば誰よりも上手くエモい文章を書くことができます。そういうことなのです。

どうか自分の感情にフタをしないでください。喜怒哀楽、全ての感情を見せてほしい。私も全てを見せます。 


文/かんそう 写真/shutterstock

書けないんじゃない、考えてないだけ。
かんそう
書けないんじゃない、考えてないだけ。
2024/5/22
1,650円(税込)
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ISBN: 978-4763141378

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【目次より】
■第1章 「文章力」の正体
・文章力=文章について本気出して考えた時間の量
・「文章力」は文章を書かない人間が作り上げた幻想
・文章とは書く前から書いている   など

■第2章 「言語化」気持ちや感動を言葉にする
・自分の中に「イマジナリー秋元康」を飼え
・「自分の感情の海」に深く潜る
・「一」を徹底的に愛する   など

■第3章 「感情」を制するものは文章を制する
・感情が溢れた文章には狂気が宿る
・テクニックを凌駕する圧倒的なパワー「怒」
・尊いを越える究極の表現「恐怖」   など

■第4章 「刺す文章」を書く
・刺す文章は「広いあるある」と「狭い固有名詞」
・文章にこだわりを持つ 文章速度/視線誘導
・句読点、改行は添えるだけ   など

■第5章 「構成」で読者の目を集める
・タイトルに命を懸ける
・摑みは読者の息の根を止めるつもりで
・「起承転結」の「承転」はシカトして「起結」と親友になる   など

■『書けないんじゃない、考えてないだけ。』を読んで、考えてから書いてもらった。

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