新婚時代にやらかしたマスオさん 

マスオは実は、なかなか破天荒なキャラとして『サザエさん』ファンの間では知られている。評論・情報系同人誌サークル『サザエさんじゃんけん研究所』所長に、マスオのそんな人柄がわかるエピソードを聞くと、「マスオさんとサザエが磯野家とは別の借家に住んでいたとき、木製の塀を勝手に切って棚を作ろうとしているところを大家に見つかってしまう話。マスオさんが小説を読んでいるとき、サザエがネタバレしそうになったため声を出せないように全身を縛ってしまう話を思いつきました」と、2つの話をあげた。

1つ目は、マスオとサザエが、磯野家に住むようになったきっかけが明かされた話だ。2019年3月に放送された「カツオのサクラ狂想曲」にて、波平の口からその真実が語られている。

ある日カツオは、空き地の中で、悲しそうに桜の木を見ている美しい女性・桜子を目撃する。彼女はもともとその土地に住んでおり、今度新しい家が建てるために桜の木が伐採されることを知り、悲しんでいるのだという。

そこで、彼女のためになんとかしようと奔走するカツオ。それを見てサザエも、地主にかけあってみようと身を乗り出すが、波平は慌ててサザエを止める。そして、「忘れたのか?」と、サザエの新婚時代について語りだした。

新婚時代、サザエとマスオは借家に住んでいたのだが、マスオは棚を作ろうとして、なんと家の周りの木製の塀を、勝手にノコギリで切り落としはじめたのだ。当然、大家さんは激怒して2人を追い出そうとしたのだが、サザエが逆ギレして、大家さんをめちゃくちゃに引っかいたり殴ってしまったりしたのだ。

とても今の『サザエさん』の作風からは想像できないほどに破天荒なエピソードなのだが、実はこれ、原作漫画に掲載されている4コマ作品の一つ。アニメの『サザエさん』では、原作を1話につき1回使うというルールがあり、その原作をもってきたというわけだ。

所長があげていた2つ目のエピソード、マスオがサザエのことを縄で縛って小説のネタバレを防ぐ展開も、原作漫画からの流用。さらに今回話題になった、サザエを見捨てる夢を見るマスオも、原作4コマの一つとなっている。この日放送された別のエピソード「一人で出来るです」「僕流カクトク術」でも、それぞれ原作漫画からの流用があり、原作とアニメを比較してみると、原作ではワカメのところを、タラちゃんに変更しているというアレンジもみられた。

「一人で出来るです」©︎長谷川町子美術館
「一人で出来るです」©︎長谷川町子美術館

アニメのおかげで常識人なイメージのあるマスオだが、その本性はなかなかのもの。しかしこれくらいでないと、あのサザエの夫は務まらないのかもしれない。

取材・文/集英社オンライン編集部