刑罰を望むのは取り締まる側の都合 

――映画の中でも、偏見の例として「誘惑に弱い人たち」「快楽の問題でしょ」というセリフがありましたが、こういった間違った知識が広まってしまったのは、なぜだと思いますか。

田中 ギャンブルやお酒、買い物にしても、普通は気分転換にやるもの、嗜好品が対象っていうのはあるでしょうね。それに手を出さなければ、ならないという大前提があります。誰でもなる病気じゃないから。たとえばうつ病とかは、誰でもなる可能性がある。

でも依存症の場合は、そもそも娯楽に手を出した、ごく一部の人がなるもので、だから同情できない。発症率はだいたい2%くらいなので、残り98%の人は「自分もやってるけど大丈夫」っていう状態なので、理解しづらいんですよ。でも確率が低いだけで、2%の人はなるからね。今は大丈夫でも、可能性はゼロじゃない。なんか「意志が弱いから」とか言われるけど、何言ってんの、私めっちゃ意志強いから。

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――主に薬物依存に関しては、刑罰にどれほどの抑止効果があるのか、それよりも回復へ繋げるほうが大事である、という議論があります。

田中 刑罰を望むのは日本の国民性もだいぶあると思うけど、あとは取り締まる側の都合ですよ。最近も京都の木津川ダルク(薬物依存症からの回復をサポートする施設)にガサ入れが入ったニュースがあったけど、あれは自分たちで出頭しますって言っていたのに、わざわざガサ入れをして、それをニュースとして出した。昔から日本に限らず、アメリカだとニクソンの時代から、世界中で薬物の取り締まり政策は、政治的・官僚的なアピールにずっと使われてきたんです。スティグマを強化することで、重要な任務を果たしているとアピールする。