設立後のトラブル
――会社名「三五館シンシャ」の「シンシャ」には、「新社」と「深謝」の意味が込められているとか。倒産してしまった前の会社(三五館)に強い思い入れがあるのですか?
もちろんです。恩返しの気持ちが強いです。私は1976年生まれで、いわゆる就職氷河期にあたる世代です。採用がない会社も多くて、就職活動のときに出版社を30社ぐらい落ちました。
「なんで私が入れないんだ」と怒っていました。入社したやつは、私よりもそんなに優秀なのかと。なんとしても自分の好きなことやってやるんだという覚悟が生まれ、その後、社員募集をしていないのに、出版社に直電をしては社長に会いに行っていました。意外と社長は会ってくれるんですけど「君の熱意はわかるけどむずかしいね」って言われて。
そんななかで、三五館だけが私を引き取ってくれました。そして育ててくれました。その三五館がなくなるという事実を突きつけられたとき、この名前だけは絶対に残そうと思って、恩返しの気持ちで出版社を興しました。
ところが、この会社名があだとなり、大手出版取次会社(本を書店に配本する会社)で口座開設ができませんでした。理由は負債が残る三五館の会社名は一部でも使えないと。
一瞬、会社名を変えることも頭をよぎりましたが、それでは意味がない。このままで行くと覚悟を決め活路を求めました。その結果、ありがたいことにフォレスト出版が応援してくれることになり、営業・販売を請け負ってもらっています。
「一人出版社」の気楽さ!
――最後に、今後の抱負を教えてください。
誰かを雇っているわけではないので、取り立てて言うような計画はないですね。成り行きで経営しているようなもんですから。
いまは消費者金融、介護ヘルパー、警察など、4冊を並行して編集しているのと、森永卓郎さんの本『ザイム真理教 それは信者8000万人の巨大カルト』『書いてはいけない 日本経済墜落の真相』が売れたので、3冊目の『がん闘病日記』を編集しているところです。
生きがいは本だけで、本作りがおもしろくてしょうがない。ずっと作るためにも、お金ができたら新聞広告をうつなど、さらに売っていきたいですね。
取材・文・写真/集英社オンライン編集部